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1089ブログ

トーハクくんの「なるほー!人間国宝展」その2

トーハクくん

ほほーい!ぼくトーハクくん!
今日は学芸研究部長の伊藤さんといっしょに「人間国宝展―生み出された美、伝えゆくわざ―」を見に行くほ。
伊藤さんは陶磁が専門だほ。今回の展示の見どころを教えてくださいだほー!


伊藤さんとトーハクくん


伊藤研究員(以下イ):やあ、トーハクくん。待ってたよ。
今回はね、東京国立博物館では初めて現代の作品にも焦点を当てたんだ。
でも、ここでないと出来ない視点がないと、やる意味がないだろう?
古いものの良さ、そしてそれをコピーしたのでは決してない現代作品の良さ、その両方を感じてほしいねえ。

トーハクくん ほうほう。それぞれに良いところがあるってことだほ。
伊藤さんは、どんなところでそれを感じるほ?

イ:うん。たとえば、ここが分かりやすいかな。


展示風景
(左)重要文化財 志野茶碗 銘 広沢 
美濃 安土桃山~江戸時代・16~17世紀 大阪・湯木美術館蔵
(右)志野茶碗
荒川豊蔵作 昭和28年(1953) 東京国立近代美術館蔵



安土桃山時代から江戸時代初期にかけての桃山文化で、茶の湯がとても盛んになった。
そこで使われた茶の湯のやきものは、やきもののなかでも特別にすごいということで、「桃山茶陶」って言われるんだ。

志野茶碗 銘 広沢

この重要文化財は、桃山時代の名陶だね。
この時代、中国の白磁に代わるものを、初めてこの釉薬が実現したんだ。
でもただの白じゃない。緋色(ひいろ)が混じっている。
完璧な白じゃないのがむしろいいね、と当時の茶人に受け入れられたんだ。

トーハクくん ほー、それはいかにも日本人的な見方だほ。
確かにこの作品がまっしろしろだったら、ちょっとピンと来ない感じだほ。この赤みがほんわか感をかもしているんだほ。

イ:トーハクくん、良いこと言うね。
対して荒川豊蔵の作品を見てみよう。
この人は、美濃の窯跡で志野の陶片を発見する。それまで志野焼は瀬戸焼の一種だと考えられていたので、この発見はとてもセンセーショナルだったんだ。
この人は志野茶碗のことを真摯に研究して、ついに窯まで再現して桃山時代の茶陶を再興しようとしたんだよ。

トーハクくん 窯まで桃山茶陶のころと同じようにつくったほ?!ひょー、大したこだわり屋さんだほ!

イ:そう。でもね、彼は途絶えた技を再現して、同じものをつくるだけに留まらなかった。
荒川さんは、緋色の部分をあえて主役として扱ったんだ。見てごらん、全体的に赤みがあってあったかみがあるだろう?

志野茶碗

これが「荒川志野」と呼ばれるものだ。
彼はこの緋色を突き詰めることで、自分の作品へと繋げていったんだね。
昔の作品は確かに良い作品だ。だけど、20世紀という時代だからこそ生まれる作品を作ることにも情熱を傾けたわけだ。

トーハクくん おお、伊藤さんの語りがアツくなってきたほ!

イ:そうだよ、「伝統」がどのように「現代」とつながっているのか、ここが展示の見どころだからね。
ある人はこう言った。

「作品は、時代が作らせている」

トーハクくん おおー!
いやごめん、ぜんぜん意味がわからんほ。

イ:うん。たとえ技術は昔のものを使っても、作っているのは現代人。だから、21世紀を生きている人間のエッセンスが必ず作品に表れる。という意味じゃないかな。

トーハクくん ほー、今日のお話は深いほ、でもなんとなく分かる気がするほ。

イ:それでねトーハクくん、僕はこの作品を見ていて気付いたことがあるんだ。
名付けて「長身的遠視的 人間国宝展のたのしみかた」っていうんだけどさ、それはね…

(ここからの話が大変長いため、今後の伊藤さんのブログにて紹介します。どういう意味なのか、お楽しみに。)

トーハクくん あわわ、伊藤さんのテンションに追いつけなくなってきたほー。


展示風景

トーハクくん ではここで究極の質問だほ。
伊藤さんがキャッツアイ、いや違うほ、ルパンだったら何を盗みたいほ?

イ:ああ…。僕ね、物欲があんまりないんだよね。

トーハクくん うえっ!
(それじゃこの企画が成り立たんほ!)

イ:うーん…困ったな。
あっ、トーハクくん、僕はこの作家と知り合いだったんだよ。


濁手つつじ草花地文蓋物
濁手つつじ草花地文蓋物
酒井田柿右衛門(十四代)作 平成17年(2005) 個人蔵



トーハクくん 十四代の酒井田柿右衛門さん?!すごいほ!

イ:現代の作家とは直接話が出来るから、作品を見るときも作家を思い浮かべながら見ることが出来るのが味わいだね。
この人は「俺は作家だ!」って顔は絶対にしない人でね。窯屋の大将って感じで、すごく優しいんだ。いっぱい、いっぱいお世話になったんだよ。
作品の展示作業をしながらそのことが思い出されて、じわーんときたね。

トーハクくん そうかあ。じゃあ、この作品を選ぶってことだほ?

イ:それでねトーハクくん、この作品は中央を少しずらして展示しているだろう?

トーハクくん 伊藤さん、質問に答えてくれだほ…(こりゃ完全にこのひとの会話のペースに巻き込まれているほ。)

イ:柿右衛門さんは、立体のなかに世界をつくるのがとても上手な人なんだ。
つつじがね、うねるように、そのうねりが続いていくように描かれている。
そんな「うねるように続いていく」感じが一番よくわかってもらえる場所を探して、今のように飾ったというわけさ。

見方1 見方2
ここから見始めて、、、       こういう風にぐるっと角度を変えてみて、、


見方3 見方4
下から見るのもいいねえ、、、      上からも見てみようか!

トーハクくん ぎゃああああす!ボクを振り回さないでー!
ぜえぜえ。じゃあこの作品でキマリだほ?

イ:いや、ひとつ選ぶとしたら、あの作品かな。

トーハクくん えー別の作品なのーーー?!


竹華器「怒濤」
竹華器「怒濤」(生野祥雲齋作 昭和31年(1956) 東京国立近代美術館蔵) の前にて、ゴキゲンな伊藤さん。


イ:これは名品だね!この作品の前にはひれ伏すね。
竹だからこそ出来るしなやかな表現。本当に竹なの?と思ってしまうほど力強い造形力。
壁に映る影の美しさもあわせて、ぜひいろんな角度から見てほしい。

トーハクくん ほんとうに、波がドトーっ!っと押し寄せてくるように見えるほ!すごい迫力だほ!
でも伊藤さん、この作品をお家のなかでどうやって使うほ?

イ:これが家の中に存在するだけで、世界が変わるだろうね。
機能性とか合理的なことだけじゃなく、そこに在ることによって空間が変わる。
存在することに意味があるんだ。
よく「工芸ってどう見たら良いかわからない」って言う人がいるんだけど、難しく考えないでほしいんだ。
こういう作品を見て「すごい!」とか「使ってみたい!」とか、心が動けばそれでオッケーなんだよ。

トーハクくん 「心が動けば、それでオッケー」伊藤嘉章。
格言いただいたほ!かっこいいほ!
伊藤さん、アツいお話をどうも有難うございました!


伊藤さんとトーハクくん
伊藤嘉章(いとうよしあき)学芸研究部長。専門は陶磁です。
伊藤さんのトークの独特なテンポに終始リードされたトーハクくんなのでした。

カテゴリ:研究員のイチオシnews2013年度の特別展

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posted by トーハクくん at 2014年02月05日 (水)

 

トーハクに「白菜」がやってくる!


「『トーハクに白菜がやってくる』? あら、ブランド野菜の販売かしら? でも・・・お高いんでしょう?」

奥さん、違います。
この白菜は、世界にひとつしかない白菜なのです。
台北の國立故宮博物院が誇る”神品”「翠玉白菜(すいぎょくはくさい)」がトーハクにやってくるのです。


 
今年6月、トーハクでは特別展「台北 國立故宮博物院―神品至宝―」(2014年6月24日(火)~9月15日(月・祝)、平成館)を開催します。
これに先立って2014年1月29日(水)、平成館大講堂で報道発表会が行われました。

発表会では、まず主催者を代表して、銭谷眞美 東京国立博物館長と、三輪嘉六 九州国立博物館長がご挨拶申し上げました。
また、本展覧会担当の富田淳列品管理課長より展覧会の構成と見どころの解説を行いました。


富田淳 列品管理課長

東京と九州の2会場で行われる本展は、中国歴代にわたるひときわ優れた文化財を多数収蔵する台北 國立故宮博物院の収蔵品から特に代表的な作品を厳選し、中国文化の特質やすばらしさを広くご紹介するものです。
台北 故宮の展覧会はこれまでアメリカ、フランス、オーストリア、ドイツでしか開かれたことがありません。
今回の展覧会は日本、そしてアジアでも初。
これまで台北に行かなければ見ることのできなかった中国歴代皇帝のコレクションを日本で見られる貴重な機会となります。

さらに!
今回は過去の海外展では出品されたことがない、故宮を代表するスーパースターのトップ2が、各2週間限定で来日!
それが冒頭でご紹介した「白菜」こと”翠玉白菜”、そして”肉形石”(九州のみ)です。
どちらも台北故宮を代表する作品であり、来訪者必見の人気者だけに、交渉は難航し出品が決まったのは最後の最後。
まさに奇跡の出品!見逃せません!

素材の美と至高の技が織りなす究極の神品

翠玉白菜(すいぎょくはくさい) 清時代・18~19世紀 
展示期間:6月24日(火)~7月7日(月)/東京のみ 台北 國立故宮博物院蔵
1つの翡翠(ひすい)の色の違いを利用して、巧みに掘り出されています。
宝飾品用としては劣る色の翡翠をあえて利用して表現された白菜は、石から彫られたとは思えないほどのみずみずしさ。
葉っぱにとまったイナゴとキリギリスにも注目!


目でいただく最高のご馳走

肉形石(にくがたいし) 清時代・18~19世紀 
展示期間:10月7日(火)~10月20日(月)/九州のみ台北 國立故宮博物院蔵
バラ肉の赤身と脂身の層が、瑪瑙(めのう)の材のもつ赤と白の縞目をうまく活かして表現されています。
石から彫りだされたものにもかかわらず、とろけそうにやわらかく見える不思議。
瑪瑙ならではの染色技法で表現された角煮の皮の照りは、もう、たまりません。



「じゃあ、見どころは『白菜』と『肉』。 これを外さなければOK?」

奥さん、とんでもない!!
今回、台北からやってくる名宝はこれだけではありません。
中国歴代皇帝のコレクションである故宮コレクションから、さらに厳選された珠玉の作品の数々が出品されます。
当館の研究員による粘り強い交渉と台北 故宮の特別の配慮によって、本展は名品中の名品揃いとなっているのです!
その一部についても富田さんから紹介がありました。


北宋の皇帝・徽宗も愛した青磁

青磁輪花碗(せいじりんかわん) 汝窯(じょよう)
北宋時代・11~12世紀 台北 國立故宮博物院蔵



宇宙を表現した崇高な山水

雲横秀嶺図軸(うんおうしゅれいずじく) 
高克恭(こうこくきょう)筆 元時代・13~14世紀 

展示期間: 6月24日(火)~8月3日(日)/東京のみ) 台北 國立故宮博物院蔵


シルクの国・中国の、幸せを願う刺繍画

刺繍九羊啓泰図(ししゅうきゅうようけいたいず) 
元時代・13世紀
東京のみ) 台北 國立故宮博物院蔵


蘇軾の奥深さ、凄まじさが横溢(おういつ)する傑作中の傑作

行書黄州寒食詩巻(ぎょうしょこうしゅうかんしょくしかん) 
蘇軾(そしょく)筆 北宋時代・11世紀 

展示期間: 8月5日(火)~9月15日(月・祝)/東京のみ) 台北 國立故宮博物院蔵


美の極み、乾隆粉彩の回転瓶


藍地描金粉彩游魚文回転瓶(あいじびょうきんふんさいゆうぎょもんかいてんへい) 
景徳鎮窯 清時代・18世紀 台北 國立故宮博物院蔵



「皇帝の玩具箱」とも呼ばれています

紫檀多宝格方匣(したんたほうかくほうこう)
清時代・17~18世紀 台北 國立故宮博物院蔵



次世代アイドル!「白菜」「肉」につづく故宮の人気者

人と熊
清時代・18~19世紀 台北 國立故宮博物院蔵


なんと豪華なラインナップ!
東京・九州の両国立博物館の研究員が厳選した231件(東京186件、九州110件)。
是非東京と九州の国立博物館をハシゴして、その全てをご覧いただきたいと思います。


また、発表会後半では、台北 國立故宮博物院 馮明珠院長のビデオメッセージ放映と一青窈さんの展覧会サポーター就任発表が行われました。


國立故宮博物院 馮明珠院長のビデオメッセージ

本展の出品作品の紹介やご尽力をいただいた関係各所への謝辞をいただきました。



展覧会サポーター・一青窈さん(写真右)
「縁のあるお仕事をいただき光栄です。一生懸命サポートします。」
サポーターとしての意気込みとご自身のお気に入りの作品などについて語ってくださいました。



さっそく銭谷東博館長、三輪九博館長と一緒に本展をPR!

女優としても活躍されている歌手・一青窈さんはお父様が台湾ご出身。
台湾、そして台北 故宮にも足繁く通われており、今後本展のサポーターとしてPR活動等にご協力をいただくことになっています。



世界の広範な地域にわたる数々の展覧会を開催してきたトーハクが、これまで実現できなかったのが、台北 國立故宮博物院の展覧会。本展はトーハクはもとより、歴史や文化に関心を持つ人々にとっての長年の「夢」ともいえます。
ついに実現した「夢の展覧会」!
奥さんにも、いえ皆様にも是非、この記念すべき展覧会の目撃者となっていただければ幸いです!!


最後に、「次世代アイドル」を別アングルで。

人と熊(部分)
清時代・18~19世紀 台北 國立故宮博物院蔵

富田さんは「チョコレートを作ってグッズ展開を。」と語っていましたが、果たしてその夢は実現なるか?


『みんな会いに来てね。』   『来てね~。』

 

カテゴリ:news

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posted by 田村淳朗(広報室) at 2014年02月02日 (日)

 

さあ、お着物で、人間国宝展へ!

1月24日(金)、「人間国宝展―生み出された美、伝えゆくわざ―」とハースト婦人画報社「美しいキモノ」とのコラボレーションイベント、「読者特別鑑賞会」が行われました。
ご参加いただいた皆様、本当に有難うございました。

レクチャー
レクチャーの様子。


「美しいキモノ」ということで、レクチャーをした小山研究員もお着物で参加。
小宮康孝さん(重要無形文化財「江戸小紋」保持者)の作品だそう。
小宮さんの作品は、特集陳列「人間国宝の現在(いま)」で展示中です。


小山研究員

「小宮さんは、宝石のような色を目指したと仰っています」とのこと。
なるほど、ただの水色ではなく艶があります。お顔も明るくキレイに映えますね。

お客様もお着物でのご来館です。展覧会場が華やぎます!
素敵なみなさまのお着物をご紹介します。


お客様
絢爛豪華な水仙の刺繍。
この季節にふさわしい、あでやかな装いです。


お客様
俳優さんと女優さんですか?!
ああ、憧れのご夫婦。こんな上品な大人になりたいです!


朝賀様
人気きものブロガーの朝香沙都子様。
こんな風に自然に着こなして、博物館や美術館を訪れたいです。


編集長様
そして、「美しいキモノ」の富川匡子編集長(左)と吉川明子編集長代理(右)。
香り立つような美しさ!まさに「美しいキモノ」です!!
美人じゃないと、きっと編集部には入れないのですね…。

「美しいキモノ」冬号は、特別展グッズ売場でも販売しています。
小山研究員が執筆したページもありますので、ぜひご覧ください。

お着物って、なかなか着る機会がありませんよね。
日本伝統工芸展60回記念「人間国宝展―生み出された美、伝えゆくわざ―」、ぜひお着物でお出かけください。

カテゴリ:news2013年度の特別展

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posted by 小島佳(広報室) at 2014年01月30日 (木)

 

人間国宝展 ギャラリートーク!

日本伝統工芸展60回記念「人間国宝展―生み出された美、伝えゆくわざ―」では、1月15日から31日の間、平日昼に現在ご活躍中の人間国宝の方々によるギャラリートークを実施しています。
特別展会場に展示されている作品1点を選んで、その作品や作り手に関するお話、そしてご自身の作品づくりのことなどをお話しいただきます。

ギャラリートークの様子
1月23日(木)森口邦彦さん(重要無形文化財「友禅」保持者)のギャラリートークの様子。


実は、トーハクの特別展会場でのギャラリートークは今回が初めての試みです。
初回、15日(水)に実施された中島宏さん(重要無形文化財「青磁」保持者)のトークの折は、まさに歴史的瞬間に立ち会ったようなドキドキ感がありました。

人間国宝自らから紡ぎだされる数々の「言葉」や「物語」は、作品の向こう側に広がる新しい一面を教えてくれます。
特別展会場に並ぶ作品を生み出した人間国宝は、いまご活躍の方々にとって、多くは「師」であったり、また「家族」であったりします。
そうした先人の近くで作品づくりや思いを体感していた人ならではのお話は、ここでしか聞くことのできない、大変貴重なものです。
21日(火)にお話をされた佐々木苑子さん(重要無形文化財「紬織」保持者)は、「先人があってこそ、今の私がある」と、感謝の言葉を表されていました。

伝統工芸は連綿と現在まで育まれ、そしてこれからまた未来へと続いていく。そのことをあらためて実感できる、そんなギャラリートークです。
作品を「目」で見て、人間国宝の声を「耳」で堪能する。
ちょっとぜいたくな平日お昼のひととき、ご参加をお待ちしております!


ギャラリートークの様子2


現役人間国宝によるギャラリートーク
1月31日(金)までの平日 13:30~14:00
≪今後の予定≫
1月28日(火)奥山峰石 重要無形文化財「鍛金」保持者
1月29日(水)原清 重要無形文化財「鉄釉陶器」保持者
1月30日(木)林駒夫 重要無形文化財「桐塑人形」保持者
1月31日(金)伊勢崎淳 重要無形文化財「備前焼」保持者

会場:東京国立博物館 平成館特別展示室第3・4室
参加費:無料(ただし、本展覧会の観覧券が必要。)

カテゴリ:研究員のイチオシnews2013年度の特別展

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posted by 横山梓 at 2014年01月27日 (月)

 

トーハクくんの「なるほー!人間国宝展」その1

トーハクくん登場

ほほーい!ぼくトーハクくん!
今日は小山(おやま)研究員といっしょに「人間国宝展―生み出された美、伝えゆくわざ―」を見に行くほ。
研究員ならではの展覧会の見どころを教えてくださいだほー!


小山さんこんにちは


小山研究員(以下O):こんにちはトーハクくん!展覧会の見どころね。
この展覧会は、国宝や重要文化財といった古い名品と人間国宝の作品を隣り合わせて展示しているところがポイントなの。


展示
(左)重要文化財 奈良三彩壺 奈良時代・8世紀 九州国立博物館蔵      
(右)三彩花器「爽容」 加藤卓男作 平成8年(1996) 東京国立博物館蔵



トーハクくん ボクの勝手なイメージだけど、「古い名品!」って言われるちゃうと、やっぱりそっちのほうがなんとなくスゴイ感じがしちゃうんだけど。

O:そうですねー。

トーハクくん えっ!
(言い切っちゃったほ!)

O:だって昔の人は制作にかけた時間も素材も全然違うんだもの、仕方のないことでしょう。
ひとつの作品をつくるためだけに生き、色んな技法を試す。そういう時間と環境こそが良い作品を生んだのよね。

トーハクくん ほー!
(小山さんはかわいいお顔なのに、コメントに男気があるほ!)

O:昔の作品はやっぱりすごい。パワーがある。
昔の日本人、つまり私たちの祖先はこんなにすごいんだってことを見てほしいという気持ちもあるの。
そして現代の作家さんたちが、ここまでがんばって発展させてきたこと、これもまたすごいことね。
こういう作品から、たくさんエネルギーをもらってほしいわ。


展示風景


トーハクくん しっかし、人間国宝かあ…。なんだか仙人みたいなイメージだほ。
小山さんは図録の執筆のために人間国宝さんにインタビューをしていたけど、実際にお話してみてどんなひとたちだったほ?

O:そうねえ、雲の上の人っていうイメージを持っている方も多いでしょうね。
でも実際はそうではないの。
どんなに偉いひとだって、皆最初はゼロからスタートするでしょ?
スタート地点があって、寄り道もして、歩む道を選択しながらやっとここまで来たの。
悩んで悩み抜いて試行錯誤して、到達した結果が人間国宝というだけの話。
今だって姿勢は変わらず、作品をつくるために日々悩んでいらっしゃるわ。

トーハクくん そうか、人間国宝も人間なんだね!当たり前のことだけど!ちょっとムネがアツくなったほ!

O:私もインタビューをしていてアツくなったわ。
作品制作も、伝統をどこまで引き継ぎ、どこまで自分の表現を出すのか、自分なりの道を見出さないといけない。その作業はとても大変なことよ。
それを粘り強く続けられたからこそ人間国宝になれるのね。

トーハクくん 粘り強く続けられる。ひとはそれを才能と呼ぶのだほ。(キマッタほ!)

O:うふふ、でも才能だけでは人間国宝にはなれないのよ。

トーハクくん ぐはっ!(かっこわる!)

O:努力、運、人との出会いも大切ね。
でも逆にいうと、いま作品の制作に携わる全ての人たちにも、人間国宝になれる可能性があるってことよ。
私は、現代人が昔の人に劣っているとは決して思わないの。
昔の日本人が、こんなに素晴らしい作品を作っていたのだということを糧にして、現代の人にはそれ以上の作品をつくってもらいたいなと思います。


展示


トーハクくん では究極の質問だほ!
もし小山さんが、世紀の美術泥棒・キャッツアイだったら何を盗みたいほ?

O:あらあらキャッツアイ?そうね…ひとつだけ選ぶのは難しいわね…
あのね、「いいもの」っていうのは古さを感じさせないものなの。
現代まで残っているのには理由があるのよ。(キラーン☆)

トーハクくん うわっ!いま小山さんの目が光ったほ!

O:そう!私は小さい頃からキラキラしたものが大好きだったの。
宝石の広告チラシを切り抜いて遊んだりしてたなあ。
ということで、私はコレを選びます!


花風有韻
截金彩色飾筥「花風有韻」(きりかねさいしきかざりばこ かふうゆういん)
江里佐代子作 平成3年(1991) 文化庁蔵



トーハクくん えっ?!小山さんは染織が専門なのに、お着物は選ばないんだほ?

O:悩んだんだけどね。
毎日同じ服を着る人っていないでしょ?だからお着物をどれかひとつって言われると困っちゃうの。
こういう作品だったら毎日手元に置いて眺めたり、中に自分の大切なものを入れたりして楽しめるじゃない?

トーハクくん にゃるほ。小山さんはこの作品のどういうところが好きなんだほ?

O:キラキラしていて本当に綺麗でしょう?
これは截金(きりかね)って言って、細く切った金箔を杉の箱に施しているの。


小山さんキラキラ


O:見て!光に当たって、まるで金糸みたいにきらめいて見えるでしょ?照明も工夫したのよ。

トーハクくん ほー、キラキラの線が折り重なってビューティほー!

O:もしキャッツアイだったら、暗闇の中で懐中電灯をつけて、パッとこのハコが目に映った時、きっとトキメクだろうなあ!

トーハクくん ♪みーつめるキャッツアイ かーふうゆういん きーんいろにひかーるー

O:トーハクくん、古い歌知ってるのね。

トーハクくん えへへ。5歳だけどものしりだほ。
でもこうやってガラスケースに入っていると、「美術作品」として見てしまうけど、「どれが欲しいかな」とか「自分だったらどう使うかな」とか、そういう風に見てもいいんだほ?

O:もちろん!そういう風に見てもらいたいわ。
だって使う人あっての工芸だもの。作り手と使い手、双方が一緒に工芸を盛り立てて、お互いに成長していくの。
そのことを心に留めて展覧会を見ていただけたらいいなと思ってます。

トーハクくん そうか、使うひとがいないと、作るひともいなくなっちゃうもんね!
使うひとも大事な役割なんだってことが、とってもよくわかったほ!
小山さん、アツいお話をどうも有難うございました!


小山さんとトーハクくん

小山弓弦葉(おやまゆづるは)工芸室主任研究員。専門は染織です。
大好きな作品(友禅訪問着「羽衣」 森口華弘作 昭和59年(1984) 滋賀県立近代美術館蔵)の前で。

カテゴリ:研究員のイチオシnews2013年度の特別展

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posted by トーハクくん at 2014年01月22日 (水)