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特別展「江戸☆大奥」10万人達成!

現在、平成館特別展示室で開催中の特別展「江戸☆大奥」(9月21日(日)まで)は、この度来場者10万人を達成しました。
これを記念し、東京都からお越しの橋本さん、松橋さんに当館館長藤原誠より記念品と図録を贈呈いたしました。


記念品贈呈の様子。左から松橋さん、橋本さん、グッズ「倭物やカヤ リバーシブル羽織」を着用した藤原館長
(注)「倭物やカヤ リバーシブル羽織」は販売を終了しております

日常的にお着物をお召しになられるというお二人。本日は、あの「大奥の世界」を見られる機会ということで、本展覧会に足をお運びいただきました。
メインビジュアルにも使用されている『千代田の大奥』に描かれた場面は、お二人にとっても思い出深い場所で、ご縁を感じられたとのこと。
大奥の華やかな調度品や染織作品の数々を堪能され、展覧会をお楽しみ頂けたとのご感想を頂戴しました。

知られざる大奥の真実を、遺された歴史資料やゆかりの品々を通して紹介する本展。19日からは後期展示もはじまりました。
美しい和刺繍で草花や風景を表わした掻取(かいどり)や小袖の数々に、大奥で演じられた歌舞伎の衣装なども展示しています。
この貴重な機会をどうぞお見逃しなく!

カテゴリ:news「江戸☆大奥」

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posted by 田中 未来(広報室) at 2025年08月28日 (木)

 

特集「創建400年記念 寛永寺」で味わう、上野の江戸文化(後編)

本館特別1室・特別2室では現在、特集「創建400年記念 寛永寺」を開催しています。

特別1室の第1~3章について前編ブログでご紹介しましたが、今回の後編ブログでは特別2室の第4~6章を見ていきましょう。

(注)会場は撮影不可となっております

第4章展示風景
第4章展示風景
第4章「徳川家の祈祷寺・菩提寺 近世仏教の造形」
寛永寺は、建立当初は徳川幕府や天下万民の安泰を祈る祈祷寺でしたが、3代将軍家光から4代将軍家綱の時にかけて、将軍家の菩提寺も兼ねるようになりました。また、寛永寺には6人の将軍と御台所などが葬られています。この章では、徳川将軍家ゆかりの寺院にふさわしい端正な造形を見せる仏画や仏像、仏具などをご覧いただけます。
 

文恭院殿葬送絵巻

文恭院殿葬送絵巻
文恭院殿葬送絵巻(ぶんきょういんでんそうそうえまき)
江戸時代・19世紀 東京・春性院蔵

 文恭院は天保12年(1841)閏正月(うるうしょうがつ)7日に没した11代将軍家斉の諡号(しごう)で、本作品はその葬送の様子を描いています。
 

観音菩薩立像
観音菩薩立像(かんのんぼさつりゅうぞう) 
鎌倉時代・13世紀    東京・寛永寺蔵

上野の山から不忍池に臨む清水観音堂は、京都東山の清水寺を模したお堂で、天海により建立されました。本尊の千手観音像も清水寺から迎えられました。本尊の右側に本像が安置されています。整った優美なプロポーションが大変美しいです。 
 

右は説相箱 左は戒体箱
右:説相箱(せっそうばこ) 左:戒体箱(かいたいばこ) 
ともに江戸時代・17~18世紀   東京・寛永寺蔵

寛永寺所蔵の美麗な仏具も多くご覧いただけます。

第5章「博物館とのつながり 博物館構内出土品」
当館の建っている場所には、かつて寛永寺の本坊がありました。本坊とは住職の居住する建物のことで、広い敷地の中にさまざまな用途の部屋をもった大きな建物がありました。この章では、当館の構内から発掘された焼塩壺や抹茶茶碗などを展示しており、当時の本坊での生活を垣間見ることができます。

第5章の展示風景
第5章の展示風景

焼塩壺 焼塩壺蓋
焼塩壺 焼塩壺蓋(やきしおつぼ やきしおつぼふた)
東京都台東区上野公園 東京国立博物館構内出土 江戸時代・17~18 世紀 東京国立博物館蔵

焼塩壺の中には、にがり成分を含んだ粗塩が詰められ、使用の際に壺ごと火に入れることで、苦味が抜けた焼塩をつくっていました。これらの焼塩壺が発掘された場所は、かつて寛永寺本坊の調理に関係する部屋があった場所であることが今回の展示に際しての調査でわかりました。
 

第6章「文化の集まる地 現代とのつながり」
寛永寺は、江戸幕府や朝廷とのつながりからあらゆる文物が集まり、多くの文化人が交流する場でもありました。現在は、上野公園として整備され、当館をはじめとする博物館や美術館などの文化施設が設立され、今も文化と人が集まる場所となっています。
この章では、15代将軍慶喜による油画や書、江戸の文化人たちが愛した銘石、また当時の最新技術であった一切経の刊行に使われた木活字と実際に印刷された一切経など、寛永寺と子院に集積されたさまざまな文物を展示し、今につながる様子をご紹介します。
 
源氏物語図屛風
源氏物語図屛風(げんじものがたりずびょうぶ)
安土桃山~江戸時代・16~17世紀 東京・円珠院蔵 


千葉・国立歴史民俗博物館の「醍醐花見図屛風」と一連のものであったといわれています。
 

重要文化財 天海版木活字
右:重要文化財 天海版木活字(てんかいもくかつじ) 
江戸時代・17世紀 
左:天海版一切経 大般若経巻第一、大般若経巻第六百、新刊印行目録巻第五(てんかいばんいっさいきょう) 
江戸時代・寛永14年~慶安元年(1637~48)刊 
ともに東京・寛永寺蔵
 
天下三銘石之一「黒髪山」
天下三銘石之一 「黒髪山」(てんかさんめいせきのいち くろかみやま) 
江戸時代・17世紀 東京・寛永寺蔵
 
江戸時代の文人・中村仏庵や松平定信が所有したのち、寛永寺に納められました。日光の男体山(別名:黒髪山)に見立てられ、天下第一の銘石とたたえられました。
 
黒髪山縁起絵巻
黒髪山縁起絵巻(くろかみやまえんぎえまき) 
鍬形蕙斎筆    江戸時代・文化10年(1813) 東京・寛永寺蔵


当時一流の9人の文化人が「黒髪山」を鑑賞する様子が描かれています。
 
蓮華之図
蓮華之図(れんげのず) 
徳川慶喜筆 明治時代・19世紀 東京・護国院蔵  
 

本特集は8月31日(日)まで開催しています。その期間、当館から寛永寺に一番近い西門から退出していただけるようにもしていますので、展示をご覧になったあと、寛永寺まで足を延ばしていただく際に、是非ご利用ください。

同時期に特別展「江戸☆大奥」も平成館特別展示室で開催しています。この夏は、本特集とあわせて上野で江戸文化をお楽しみください。
 
 

公式図録

完売しました。

本特集の公式図録をミュージアムショップで販売しています。作品のカラー図版やコラムのほか、江戸時代の寛永寺の地図上に現在の上野公園の主な施設を記載した「重ね地図」も掲載。上野ファン必携の一冊です。


特集「創建400年記念 寛永寺」

編集・発行:東京国立博物館
定価:1,210円(税込)
全36ページ(オールカラー)

ミュージアムショップのウェブサイトに移動する
特集「創建400年記念 寛永寺」公式図録表紙

 

 

カテゴリ:研究員のイチオシnews彫刻書跡考古特集・特別公開工芸

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posted by 沖松健次郎(列品管理課長)、長谷川悠(出版企画室) at 2025年08月05日 (火)

 

特集「創建400年記念 寛永寺」で味わう、上野の江戸文化(前編)

本館特別1室・特別2室では現在、特集「創建400年記念 寛永寺」を開催しています。
 
展示風景
展示風景
 
東京・上野の寛永寺は、天台宗の寺院です。寛永2年(1625)に、徳川幕府の安泰と万民の平安を祈願するため創建されました。当館が所在する上野公園一帯は、かつては寛永寺の敷地でした。
本特集では、寛永寺とその付属の寺院(子院)に伝わる絵画や工芸品、仏像彫刻、当館所蔵の寛永寺ゆかりの作品、構内から出土した考古遺物などを通して、寛永寺の歴史や当館との関係性をご紹介しています。
 
寛永寺 根本中堂
寛永寺 根本中堂
 
本特集は6章構成で、特別1室は第1~3章、特別2室は第4~6章をご覧いただけます。
今回の前編では、特別1室の展示を見てみましょう。
 
(注)会場は撮影不可となっております
 
第1章「江戸の護り 上野の山」

寛永寺の正式名称は「東叡山寛永寺(とうえいざんかんえいじ)」。「東の比叡山」の名のとおり、京の都の鬼門(北東)を封じる役割もある天台宗の総本山、比叡山延暦寺にならい、江戸城の鬼門に位置する江戸の護りとして上野の山に建てられました。
この章では、江戸時代の地図より、寛永寺が上野の山に建立された地理的な背景をご紹介します。
 
第1章展示風景
第1章展示風景
 
東叡山之図
東叡山之図(とうえいざんのず) 
江戸時代・17~18世紀 東京国立博物館蔵
 
上野台地の麓(ふもと)にある不忍池は、比叡山と琵琶湖の関係になぞらえられ、かつての寛永寺敷地内の建物も延暦寺内の配置にならって建てられていました。
 
第2章「江戸仏教の先導者 慈眼大師天海」
 
寛永寺を建立した慈眼大師天海(じげんだいしてんかい)は、徳川家康・秀忠・家光と、三代にわたる徳川将軍の帰依(きえ)を受け、幕府の宗教政策や朝廷との関係において影響力を持ち、信長焼き討ちで疲弊した比叡山延暦寺の復興にも尽力するなど、当時の仏教界において先導的な存在でした。
 
この章では、天海の肖像画や、彼が復興した法会に関する書、寛永寺内における天海に対する信仰を伺える仏画など、天海を理解する手がかりとなる作品をご紹介します。
 
第2章展示風景
第2章展示風景 
 
慈眼大師像(模本)
慈眼大師像(模本)(じげんだいしぞう もほん)
森田亀太郎模 大正~昭和時代・20世紀 東京国立博物館蔵 原本:江戸時代・17 世紀 埼玉・喜多院蔵
 
第3章「近世高僧伝絵の白眉 両大師縁起絵巻」
 
当館の東隣には寛永寺開山堂(両大師)があります。ここには、寛永寺を創建した慈眼大師天海と、比叡山延暦寺の中興の祖といわれる第18代天台座主(天台宗を統括する最高位の僧職)慈恵大師良源(じえだいしりょうげん)の2人がまつられています。良源は正月三日が命日であることから「元三大師(がんざんだいし)」とも呼ばれています。
 
この章では、住吉具慶(すみよしぐけい)がこの2人の生涯を描いた「元三大師縁起絵巻」と「慈眼大師縁起絵巻」を展示しています。具慶は後に徳川幕府の御用絵師となりますが、その背景にはこの絵巻の制作の功があったと考えられます。2つの絵巻はあわせて両大師縁起絵巻と呼ばれており、緻密な細部描写や活き活きとした人物描写、発色の良い質の高い絵具を用いた華やかな画面がみどころです。
 
また、元三大師縁起絵巻はもともと6巻一組で制作されましたが、現存しているのは3巻分だけです。しかし、当館では全巻分の稿本(下絵)を所蔵しており、今回の展示では、失われた巻を稿本によってご覧いただきます。寛永寺の作品と当館の稿本を一緒に展示するのは初めての機会になりますので、是非ご覧ください。
 
元三大師縁起絵巻 巻第二
 
元三大師縁起絵巻 巻第二
元三大師縁起絵巻 巻第二(がんざんだいしえんぎえまき) 
住吉具慶筆 江戸時代・延宝 7年(1679) 東京・寛永寺蔵
展示期間:8月3日(日)まで。巻第五は8月5日(火)~31日(日)で展示
 
元三大師縁起絵巻稿本のうち巻第四
元三大師縁起絵巻稿本のうち巻第四(がんざんだいしえんぎえまきこうほん)
住吉具慶筆 江戸時代・延宝7年(1679) 東京国立博物館蔵
展示期間:8月3日(日)まで。巻第六、巻第七は8月5日(火)~31日(日)で展示
 
慈眼大師縁起絵巻 巻一
 
慈眼大師縁起絵巻 巻一
慈眼大師縁起絵巻 巻第一(じげんだいしえんぎえまき) 
住吉具慶筆 江戸時代・延宝7年(1679)  東京・寛永寺蔵
展示期間:8月3日(日)まで。巻第二、巻第三は8月5日(火)~31日(日)で展示
 
特別2室の様子は、後編ブログでご紹介します。
 
本特集は8月31日(日)まで開催しています。その期間、当館から寛永寺に一番近い西門から退出していただけるようにもしていますので、展示をご覧になったあと、寛永寺まで足を延ばしていただく際に、是非ご利用ください。
 
同時期に特別展「江戸☆大奥」も平成館特別展示室で開催しています。この夏は、本特集とあわせて上野で江戸文化をお楽しみください。
 
 

公式図録

完売しました。

本特集の公式図録をミュージアムショップで販売しています。作品のカラー図版やコラムのほか、江戸時代の寛永寺の地図上に現在の上野公園の主な施設を記載した「重ね地図」も掲載。上野ファン必携の一冊です。


特集「創建400年記念 寛永寺」

編集・発行:東京国立博物館
定価:1,210円(税込)
全36ページ(オールカラー)

ミュージアムショップのウェブサイトに移動する
特集「創建400年記念 寛永寺」公式図録表紙

 

 

カテゴリ:研究員のイチオシnews特集・特別公開絵画

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posted by 沖松健次郎(列品管理課長)、長谷川悠(出版企画室) at 2025年07月29日 (火)

 

天窓の大掃除

皆さんは「東京国立博物館」と聞いて、まず何を思い浮かべますか? 

本館の大階段をイメージされる方も多いのではないでしょうか。


本館大階段
 
テレビドラマやミュージックビデオなどでも使われており、東博のフォトスポットとしても人気の場所です。
大理石の手すりや、アール・デコ調の照明に目を奪われますが、目線を上に向けると...
 

本館大階段から天井を見上げた風景
 
吹き抜けの天井は格子状の格天井(ごうてんじょう)で、その一部がガラスの天窓になっています。
 

天窓から入る自然光
 
実は今年に入ってこの天窓の大掃除を行いました。
その作業の様子をご紹介します。
 
まずは、本館の屋根から天窓の外側に行きます。
 
天窓の近くで作業をしている様子
 
こちらは掃除前の天窓です。
砂やほこりが積もっています。
 
汚れている天窓
 
ガラスを一枚ずつ掃き、その後汚れをふき取ります。
 
天窓の砂などをほうきで掃く様子
 
天窓の汚れをふき取る様子
 
作業後のガラスがこちらです。
輝きを取り戻しました!
 

きれいになった天窓
 
本館エントランス全体が、心なしか明るくなったようです!
 

光が入る大階段
 
ご来館の際には、作品はもちろんぜひ天窓にもご注目ください。
(足元にはご注意くださいね)
 
できれば梅雨の晴れ間がおすすめです。
 
 

カテゴリ:news展示環境・たてもの

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posted by 宮尾美奈子(広報室) at 2025年06月13日 (金)

 

千住博先生と和紙をもんで作品を作ってみよう

東京国立博物館の魅力を幅広い世代の方に伝えていただく東博アンバサダーの皆さまに、当館のイベントやさまざまな事業に携わっていただいています。2025年5月17日(土)、東博アンバサダーのお一人である日本画家の千住博さんを講師にお迎えして、小学生向けのワークショップを開催しました。今回はその様子をお伝えします。
 
 
千住先生の説明を真剣に聞く参加者の皆さん 
 
日本画家。1958年生まれ。東京藝術大学卒業。同大学院修了。95年ヴェネチア・ビエンナーレ名誉賞。イサム・ノグチ賞、恩賜賞、日本芸術院賞受賞。メトロポリタン美術館、英国国立ヴィクトリア&アルバート博物館等に常設、高野山金剛峯寺等に収蔵。2022年日本藝術院会員。
 
  撮影:十文字美信
 
会場は、本館地下 みどりのライオン。ワークショップには、小学5~6年生の31名が参加しました。 
ワークショップの説明文には、このように書いてあります。
「和紙を手でもんで、もんだ和紙が何に見えるかイメージをふくらませます。もんだ和紙の上に動物や植物などの絵を貼り付けて、想像の世界を作ってみましょう。
(注)水彩絵の具、絵筆、パレットを持参してください。絵の具や接着剤を使用するため、汚れてもよい服でご参加ください。」
いま分かっている情報は、これだけ。これから千住先生と、一体どんなことをするのかと、皆さんドキドキしている様子でした。
 
 
会場には、ブルーシートの上に、このセットが準備されていました。
 
ワークショップで使うもの
 
右上から、木工用ボンド、油性マジック、はさみ、筆洗い用のコップ。
用紙は3種類あり、一番下から、厚紙、画用紙、そして本日の主役、和紙(45センチ平方の白麻紙)です。
 
いよいよ、ワークショップ開始!
はじめに、千住先生の自己紹介と、日本の無形文化遺産である和紙の特徴について説明がありました。
そしてさっそく、「さあ、和紙にさわってみよう!」と、先生から声かけ。
初めて和紙にさわる参加者もいるので、少し緊張気味に手に取ります。いつも使う紙とは、手触りや質感が違うようです。
 

和紙の特性について説明を熱心に聞いています。
 
「それでは、和紙をもんでみよう!ぐしゃぐしゃー!」
躊躇なく和紙をもみ始める千住先生!いきなりの展開に、「えっ、いいの…?!」と少し困惑している方もいれば、迷いなく思いきりもみ始める方もいて、初めての作業に会場は大盛り上がり。和紙をもんでは、少し開いて、またもんで。それぞれ作りたい作品のイメージをふくらませながら、思い思いにもみます。ここでのもみ方によって、和紙の表情が変わってきます。
 
 
これで何を作ろうかな…
 
もんだ和紙のかたまり。そのかたちやしわから想像をふくらませて、これをどのように使って、何を作るかを決めていきます。もちろん、上下左右、表裏のどちらの面を使うかなど、和紙の使い方は自由。少し手でちぎったり、はさみをつかって切ったり、何をしてもOK。
「やっていけないことは、何も無いんだよ。」
先生の言葉が、心に力強く響きます。
 
作品のテーマが決まったら、台紙となる厚紙に、もんだ和紙をボンドではりつけていきます。
 
 
 
ですが、テーマを決めるのはとても難しいことです。なにを作ればいいか迷って、手が止まってしまう…。
千住先生は、そんな一人ひとりに寄り添って、対話しながら、それぞれのテーマを引き出すお手伝いをしてくださいます。
 
 
千住先生は、参加者全員とじっくり向き合って、やさしく楽しく、丁寧に導いてくれます。
 
和紙を厚紙にはりつけたら、水彩絵の具で色をつけていきます。皆さん、いつも描いている画用紙とは違う、凹凸を感じる塗り心地を楽しんでいるようです。
 

 
絵の具の乗り方も、画用紙とは違う感覚。塗る方法も、人それぞれです。

 
「和紙をたくさん使っていいよ!」と先生からアドバイス。和紙は1枚だけではなく、複数枚使ってみると、作品の世界がまた広がっていきます。
 

たくさんの和紙を使うと、作品のイメージが一層ふくらみます。
 
余裕のある人は、作品のテーマに沿うモチーフを画用紙に描いて、ハサミで切り取り、それを和紙の画面に貼って、作品の世界をさらに深めていきます。
 
 
画用紙に描いたモチーフを切っているところ。
 
想像力をふくらませながら、いろいろな表現を試すうちに、あっという間に90分が過ぎてしまいました。ここで、お時間は終了。皆さん、とても集中して作品づくりに励みました。まだまだ描きたりない、作り足りない人と言う方が多かったので、
「お家に帰って、もし時間があったら、続きを作ろうよ。そしたら、作品がどんどん良くなってくるよ!」と先生から声かけ。
 

たくさんの色を使って、素敵な作品が出来上がりました!
 
最後に、千住先生から今日の感想とご挨拶がありました。
「最初に和紙をもんだ時には、みんなが同じようなしわになっていたよね。そのしわから、みんなそれぞれ違う世界がうまれたね。自分が今作ったものに誇りを持ってほしいと思います。でも、お友達の作品も見てごらん。ああ、こんなことを思いついたんだって思うでしょう。どれをとっても本当に素晴らしい。美術っていうのは、他の人と比べてどうということではなくて、みんなが全員違うっていうこと、多様性を感じることが出来るものだと思います。お互いに尊敬し合うことができるんじゃないかな。違うって、なんて素晴らしいんだろうって思いました。
1時間半、わき目もふらずに制作に集中している姿が、本当にアーティストの姿だったと思います。将来何になろうかなと思った時に、この時間、みんなと多様な世界を一緒に作った、こんな大切な仲間たちがいたということを思い出して、忘れないようにしてほしいと思います。僕は今日、ここに来られて本当によかった。皆さん、どうもありがとう!またどこかで会おうね!」
 
大きな拍手で、ワークショップ終了!
 
参加者の方からは、こんな感想をいただきました。
「初めて和紙を使いました。立体感が出るんですね。千住先生からは『考えることも大切。だけど、作るものをひとつ決めたほうが良いよね』というアドバイスをもらって、テーマを道に決めて、作品を作りました。」
「和紙をくしゃくしゃにして使うと、描き心地がいつもと違うと感じました。千住先生に『きれいな色だね』と言っていただけて嬉しかったです。」
「日本の伝統的な和紙を、身近に感じました。」
「和紙は、いつも使う紙と違って面白かったです。あじさいの花びらを作る時に、和紙のしわを使って表すことができました。」
「和紙は繊維がかたいんだなと感じました。千住先生から『いいね、豊かだね』と言っていただけました。」
「習字を習っているので、普段から半紙を使います。いつもは字を書くものなのに、それをもむという作業がとても楽しかったです。和紙にもこんな一面があるのだなと知ることが出来ました。」
 
このように、千住先生から一人ひとりに向けて細やかなご指導があり、参加者の皆さんも先生の本気に応えようとしている、その熱が見ている筆者にも伝わってくるほどでした。日本を代表する世界的アーティストである千住先生に全力でぶつかっていく、参加者の皆さんの真剣なまなざしが忘れられません。千住先生、そして参加者の皆さん、本当に有難うございました!
 

 

カテゴリ:news催し物

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posted by 東京国立博物館広報室 at 2025年05月27日 (火)

 

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