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日本製《大ガラス》の旅 ~準備編~

10月2日開幕の特別展「マルセル・デュシャンと日本美術」に向けて、現在準備を進めております。この展覧会には、米国・フィラデルフィア美術館の著名なデュシャン・コレクションが数多く出品されますが、どうしても持ってこられない作品の一つが、《彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも》、通称《大ガラス》です。

《大ガラス》の複製は、1961年に制作されたストックホルム近代美術館の「ストックホルム版」、1966年に制作されたテート・ギャラリーの「ロンドン版」がデュシャンの在命中に制作されましたが、デュシャンの死後、1980年に制作された3番目の複製が、現在東京大学駒場博物館にある「東京版」です。
東京版は、デュシャンと親交のあった美術評論家で詩人の瀧口修造、当時多摩美術大学教授であった東野芳明両氏の監修で制作されたもので、他の複製と違い展覧会に際して展示目的で制作されたのでなく、研究用としてデュシャンが作成した当時の技術をできるだけ忠実に使って制作されました。現在フィラデルフィア美術館にあるオリジナルの《大ガラス》は1926年に破損してデュシャンが修復したものですが、東京版は破損する前の「オリジナル」の姿を再現しようとつくられています。

《大ガラス》は、デュシャンの最も重要な作品の一つで、今回トーハクでの展覧会開催にあたり、特別にお願いしてお借りすることになりました。駒場博物館以外での展覧会に出品するのは、2004-2005年に国立国際美術館と横浜美術館で開催した「マルセル・デュシャンと20世紀美術」展以来のことで、今回フィラデルフィア美術館による国際巡回先のソウル、シドニーには作品の安全上輸送ができないため、トーハクのみご出品いただきます。
当時の技術で制作された「ガラス絵」なので、大変脆弱でトーハクへの輸送には事前に確認することが多くあります。
輸送に向けて、先月末に駒場博物館にて勉強会を開いていただきました。
 


当館研究員だけでなく、実際に輸送にあたる日本通運のご担当とガラスの取り扱いをされるご担当の皆さんも参加しました

概要の資料を元に、駒場博物館の学芸員である折茂先生、そして、当時実際に「東京版」の制作にあたった有福先生が、《大ガラス》の各パーツの説明、取り外す箇所、取扱についての注意点をご説明くださいました。


当時、直接制作にかかわった有福先生が、作品の構造、各部分に使われている技法などについて、解説してくださいました


実際に作品を詳細に検分します


前回の移送の際撮影したビデオも確認します。写っている作業員の方は今回も関わっていただきます


各部分の採寸は、準備をする上で大変重要です

いよいよ特別展「マルセル・デュシャンと日本美術」まであとほぼ1カ月。
《大ガラス》がトーハクへの旅を無事に終えられるよう、輸送当日まで準備を重ねます!

カテゴリ:2018年度の特別展

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posted by 鬼頭智美(広報室長) at 2018年08月28日 (火)