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トーハクくん、大包平で刀剣の魅力にふれる!

ほほーい!ぼくトーハクくん!
今日は刀剣界のビッグスターが展示されてるって噂を聞いて、本館の13室に来たんだほ。
ブームあっつ熱の刀剣を一目見ようと思ってるんだほ。


おー、トーハクくん。ようこそ刀剣の部屋へ。

酒井さん、おつかさまだほ! 今日はよろしくだほ。
それで、その刀剣のスターはどこにいるんだほ?

この太刀、大包平(おおかねひら)のことだね。

国宝 太刀 古備前包平(名物 大包平) 平安時代・12世紀
国宝 太刀 古備前包平(名物 大包平) 平安時代・12世紀

おおかねひら? ほー、国宝なんだほ!
ところで酒井さん、題箋には太刀のあとにも色々かかれてるんだけど、古備前包平とか、これどんな意味だほ?

えー、古備前とは、平安時代のおわりに備前国、現在の岡山県の東南部にいた刀工のことを指します。備前国は、鎌倉時代に一文字派、長船派などが生まれて、刀剣の一大産地となりましたが、このうち古備前とはそうした流派より古い刀工の総称をいいます。さらに、このうち包平は古備前を代表する刀鍛冶で、この作品は包平の傑作として知られています。江戸時代には岡山藩の池田家に伝来し、18世紀の前半に全国の名刀を集めた『享保名物帳』によると、寸法が長いことから「大包平」の名がついたそうです。

僕といっしょで、存在感ありまくりだほ!

おー、分かるかい。うれしいね。
まず、大きさがあって迫力があるよね。でも、反りのカーブとかは無駄がなく、刀剣独特の鋭さのある美は保っているよ。また、地鉄にあらわれる木材のような模様はきめ細やかで、刃文は小模様で複雑な形で、細かい変化にあふれているんだよね。

国宝 太刀 古備前包平(名物 大包平) 平安時代・12世紀(部分)
国宝 太刀 古備前包平(名物 大包平)の地鉄と刃文(小乱[こみだれ])

ふんふん。

同じ部屋に展示されている、鎌倉時代おわりの相模国(神奈川県)で活躍した刀工、相州国光の短刀と比較すると、大包平にみられる刃文の複雑な形がよりわかるよね。こうした大包平の刃文を「小乱(こみだれ)」、国光の直線的な刃文を「直刃(すぐは)」と呼んでいるのだけど、刃文は刀工の個性があらわれるところなんだ。

重要文化財 短刀 相州国光 鎌倉時代・13世紀 渡邊誠一郎氏寄贈(部分)
重要文化財 短刀 相州国光の地金と刃文(直刃[すぐは])

重要文化財 短刀 相州国光 鎌倉時代・13世紀 渡邊誠一郎氏寄贈
重要文化財 短刀 相州国光 鎌倉時代・13世紀 渡邊誠一郎氏寄贈

で、大包平はどうしてこんなに大きいんだほ?

うーん・・・

うーん・・・

分からない、謎だね(キッパリ)。



えー、あくまでも私見ですが、現存している大包平と同じ時代、12世紀後半の太刀の多くは、もともとの刃渡り(刃長)が2尺7~8寸(82~85cm)くらいあったと考えています。でも、そんな中で、数は少ないけど3尺(約90cm)前後のものもある。大包平の刃渡りは2尺9寸4分(89.2㎝)で、この数少ないほうに入ります。こうした長い太刀の使い方は正確に伝えられないけど、確実に言えることは、これだけ大きな太刀が現代に残っていて、ものすごい迫力を持っているということ。

だから“大”包平なんだほ!
こんだけ大きいんだから、すんごい重いんだほ?

確かにこの太刀の重量は、当館の先輩である佐藤貫一氏(号 寒山)が計測していて、1,350gあるらしい(※1)。江戸時代に多くあった2尺3寸(69.7㎝)の刀剣は大体800gだから、それに比べたら重いといえるね。でも実際に持つと、1kgを超える鉄の塊のような重々しさは感じないんだよ。これは、さっき言った反りのカーブや厚みの調節など、手に持ったときのバランスが相当考えられているからだと思うね。
そのほかにも目に見える部分で、ある工夫がしてあるんだけど、トーハクくん分かるかな?
(※1 佐藤寒山 『日本刀は語る』 青雲書院 1977年 204ページ)

(どれどれ・・・)
おっ、もしかして!
隣に展示している太刀、古青江貞次と比べると、刀身に溝があってへこんでるんだほ。きっと余分なお肉を削って身軽にしているんだほ?

国宝 太刀 古備前包平(名物 大包平) 平安時代・12世紀(部分)
国宝 太刀 古備前包平(名物 大包平)の茎(なかご)から刀身に施された溝

重要文化財 太刀 古青江貞次 鎌倉時代・13世紀(部分)
重要文化財 太刀 古青江貞次(部分)

重要文化財 太刀 古青江貞次 鎌倉時代・13世紀
重要文化財 太刀 古青江貞次 鎌倉時代・13世紀

すごーい、正解だよ、トーハクくん!

でも削っちゃったら、ポッキリ折れそうだけど、大丈夫だほ?

大丈夫。確かにこの溝(樋[ひ])がない方が強度は優れているけど、刀身の重量を軽くさせ、なおかつ打撃を受けたときに衝撃を吸収する、そんな理にかなった形状になっているんだ(※2)。溝のある刀身の断面をみると“H”の形に見立てることができるよね(図)。工学でもこの形は、H形の側面から重量がかかったとき、少ない材料で高い強度を発揮できる構造として知られているんだよ。
(※2 臺丸谷 政志 『日本刀の科学』 SBクリエイティブ 2016年 108ページ)

 図 溝(樋)のある刀剣の断面イメージ

さすが国宝、大包平! ところで酒井さん、大包平は大きいから国宝なんだほ?

うーん、ちょっと違うね。とはいっても、これは僕なりの考えなんだけど・・・

ほー?

国宝になる刀剣の条件、それは、健全、刀工の個性、そして伝来。どれも大切な要素なのだけど。

へー。でも、太刀の健全ってなんだほ? なにが、すこやかなんだほ?

健全っていうのは研ぎ減りがしていない、生(うぶ)のまま(磨上[すりあ]げていない)、つまり生まれたままの姿ってことだね。
この3条件はいうなれば美術工芸品の分野にとっては大事な要素で、この3つを兼ね備えているものって単純にすごいなって、相当に大切にされてきたと思うんだよね。
んで、特に大包平はそれについて比類がないんだ!

分かった!!!
大包平の「大」は大きさじゃなくて、“グレート”の「大」なんだほ!

いいこと言うね、トーハクくん! さっき紹介した佐藤氏もそう言ってたなぁ(※3)。
(※3 佐藤寒山 『日本名刀物語』 白凰社 1962年 124ページ)

健全で個性があって、伝来もしっかりしてる。きっといままでの所有者にうーんと大事されてきたんだほ。

この大包平の手入れや展示をしていると、それはもう、すさまじいぐらいに大事にされてきたのが伝わってくるよ。

なんでだほ? グレートなオーラが出てて、大事にしなきゃって思っちゃうほ?

なんでだろうね?
実はこの大包平、古備前の刀剣のなかではいい意味で相当変わっているんだよ。きめ細やかな地鉄や、上から下までむらなく明るく反射する刃文は、あまり古備前の刀剣にはないんだ。「偉大なる例外」と言っていいくらい。それに伝来も池田家で大切にされていた以前はよくわからない。
うーん、おそらくこの太刀を最初に見出した人は尊敬されるべき人だと思います。例外を認めて名刀とみなすのは「高い見識」と「風格を見極める判断力」、そしてこれらを自らの見解として発信する「大きな勇気」が必要です。たぶんこうして見出された美と大事にしなくちゃいけない気持ちには大きな関係があると思います。
謎が多い太刀だけど、それはそれで展示を見にきたお客さんにも想像を膨らませて一緒に考えてほしい、僕はそんな風に思うよ。

しっぶー!。うん、僕も一緒に想像するほ。
酒井さん、またいいのがあったら話を聞かせてほしいほ。今度はユリノキちゃんも連れてくるほ。
今日は、ありがとうだほ!

あいよ。また遊びにくるといいほ。あ、言葉うつっちゃた。


 

国宝 太刀 古備前包平(名物 大包平)は本館13室で4月8日(日)まで展示中だほ。
みんな見にきてほしんだほーっ!
 

 

カテゴリ:研究員のイチオシなるほートーハク

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posted by トーハクくん at 2018年03月13日 (火)

 

 

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