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「フランス人間国宝展」展示・照明デザイン

フランス人間国宝展(9月12日(火)~11月26日(日)、表慶館)の展示・照明デザインが、哲学的とも思えるエレガントさで仕上がりました。

「フランス人間国宝展」会場の表慶館
「フランス人間国宝展」会場の表慶館


その空間の質を最も向上させるのは、展示デザイナーのリナさんの空間コンセプトと、そのイメージをできる限りリアルなものとするための、照明ディティールへの徹底したこだわりです。

リナ・ゴットメさんと照明の明るさを相談・確認
来日した展示デザイナー、リナ・ゴットメさんと、天目茶碗への照明の明るさを相談・確認する。
事前にフランスから送られてきたLED照明器具のビーム角(光の照射角度)の仕様が、茶碗のサイズに合わないため、、予め用意しておいた「グレア=眩しさをカットするスヌート(筒)」を取りつけて、展示予定の天目茶碗を輸送箱から取り出し、明るさ・強さ/反射光の眩しさの具合を検証します。



少しだけその秘密を紹介します。

第1室の展示イメージ
最初の打合せ資料にあった、第1室の展示イメージを見て、ぜひこの空間を実現したい!と思ったものの、
次の瞬間には、さて現実的なことを考えると…



私事ながらフランスとの仕事は、2002年、パリ日本文化会館での「HANIWA展」以来のことで、久しぶりに彼らとの展示・照明デザインのプロセス体験が蘇りました。その展示で、日本の埴輪を見せるために彼らが大切にしたことは、「異文化を直感的に感じること」のため、「快適な暗さへの誘い」と、「モノに吸い込まれるような感覚」ということでした。

パリ日本文化会館での「HANIWA展」
パリ日本文化会館での「HANIWA展」の様子
はにわ ―悠久の守護者―Ⅴ-Ⅵ世紀 パリ日本文化会館 2001年
Haniwa, gardiens d'éternité des Ve et VIe siècles, Maison de la Culture du Japon à Paris, 2001



まず「異文化を直感的に感じる」というのは、それが、日本から海外へ文化財・美術品を紹介する展覧会であっても、また、外国から日本へ運ばれて日本で披露される場合も、展示されるモノが、つくられた歴史・社会的、文化・芸術的な背景を、それを見る人々に感じ・理解してもらうことが重要なことでした。

第1室 陶器:茶碗 Tenmoku(天目) ジャン・ジレル
第1室 陶器:茶碗 Tenmoku(天目) ジャン・ジレル


つぎに「快適な暗さへの誘い」とは、言いかえれば「超日常的・形而上的経験」あるいは「異次元空間体験」を提供するための「しかけ」をデザインすることであるといえます。この度会場となった、表慶館の部屋ごとのボリュームと、フランスの人間国宝の作品とを、ダイナミックな鑑賞動線でつなぐ展開は、きっと見る人を飽きさせないでしょう。

第1室 陶器:茶碗 Tenmoku(天目)(部分) ジャン・ジレル
第1室 陶器:茶碗 Tenmoku(天目)(部分) ジャン・ジレル


そして「モノに吸い込まれるような感覚」とは、余計なものを置かないことであり、展示作業時間ぎりぎりまで、まさに断捨離!のような、引き算のインテリアデザインを徹底しておこなうことでした。

「そこにモノを置くか/置かないか」について、人間国宝の作家・展示デザイナー・照明デザイナー・施工者・技術者・企画担当者、プロジェクトに関わる全ての現場スタッフが、細部まで徹底してこだわった成果をご覧ください。
 

フランス人間国宝展チラシ

「フランス人間国宝展」は、2017年11月26日(日)まで開催中

15人の匠による美と技の嬌艶。卓越した技と伝統、そして未来へと繋がる華麗な美の世界を展示室で体感してください。

展示の詳細はこちら
「フランス人間国宝展」ブログはこちら

 

カテゴリ:研究員のイチオシ2017年度の特別展

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posted by 木下史青(デザイン室長) at 2017年11月02日 (木)