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フランス人間国宝展 リナさんインタビュー

やっと開幕した。。。というのが、正直な感想の「フランス人間国宝展」(2017年9月12日(火)~11月26日(日))。もうすでにご覧いただけましたでしょうか?いつものトーハクとは全く違った雰囲気の会場を。

今回会場の空間デザインをされたのは、フランスで活躍する建築家のリナ・ゴットメ(Lina Ghotmeh)さん。細かなところまで目を配り、微細な修正指示を出し、時には大胆にプランを変更。夜を徹しての作業という日仏双方のスタッフの努力あってこその完成となりました。そんな中、90%くらい会場が出来上がった9月9日の夜、リナさんに今回の会場における空間演出について解説してもらいました。

リナ・ゴットメ(Lina Ghotmeh)さん
リナ・ゴットメ氏 
(c)Hannah Assouline



第1室のテーマは「géométrie(幾何学的構造)」と「minéral(鉱物)」。中央と周囲に展示台を設け、作品を規則正しくきっちりと区切って配置。そのうえで茶碗が置かれたステージには、じっと見ていないと分からない程度の微かな光の明滅プログラミングが施されており、星が瞬く宇宙のイメージが投影されています。その宇宙を取り囲むのは、茶碗と同じく土から生み出された四季を感じさせる作品であり、部屋全体を通して季節に抱かれた宇宙の姿を現しているのだそうです。

茶碗の煌めきは星の瞬き。第1室展示台の茶碗
茶碗の煌めきは星の瞬き。第1室展示台の茶碗


第2室のテーマは「trésor(宝物)」ということで、まさに希少な素材を用いた最高級品と呼ぶべき作品が並べられています。第1室の整頓された展示とは異なり、この部屋は凸凹とした不規則な展示台が特徴。これにより、一つの作品をあらゆる角度から見ることが可能になっています。

宝物感満載な第2室の展示風景
宝物感満載な第2室の展示風景


第3室は「intimité(親密)」「légèreté(軽やかさ)」をテーマに、小さな部屋を構成しています。壁紙をめくると、まるでそこがアパルトマンの外であるかのような気持ちになれる部屋にしたかったとのこと。室内の光が朝から夜へと一日の流れを追うように変化していきますので、時間の流れを感じながら楽しんでいただきたいお部屋です。

第3室、夕刻。癒されます
第3室、夕刻。癒されます。。。


第4室は「animé(活き活きした)」「ouvert(開いた)」がテーマ。第3室が閉じた個人の空間だとしたら、ここは開けた世界です。傘と扇という、物理的に“開く”ものを展示することで、その活力を示したかったとのことでした。

第4室の展示作業風景。リナさん指示出し中
第4室の展示作業風景。リナさん指示出し中


第5室についてリナさん、「布の中って潜り込みたくならない?」とニッコリ。潜るにはちょっと作品が荘厳すぎるんですけど~と返すと、「そういうものに潜るほうが、スリルがあっていいのよ」だそうです。ちなみに壁に張られている布も、同じ作家さんが手掛けたものです。展示作業中、潜ってみようと思いましたが、できませんでした。。。

これは潜ったら痛そう。。。?第5室「トレーン」(部分)
これは潜ったら痛そう。。。?第5室「トレーン」(部分)


第6室は、前室の暗さから一転、白く浮遊する世界。白といっても壁紙の色をわずかにクリーム色にすることで、ノスタルジーを表しているのだそう。「古い技術の新しさや革新性を示す部屋にしたかったのよ」とのことでした。

第6室展示風景、アイボリーが優しい印象です
第6室展示風景、アイボリーが優しい印象です


第7室は、作品の「surréel(超現実)」な雰囲気に合わせ、幻想的な照明を施した白い世界にしたそうです。実は羽根細工の作品、ケースなしで展示するのは今回初めてだそうなので(リナさんの説得に作家さんが折れたのでしょうか?)、間近で見られる大変貴重な機会でもあります。

第7室で、木を差す位置を指示しつつ手伝うリナさん
第7室で、木を差す位置を指示しつつ手伝うリナさん


最後の第8室のテーマは「dynamique(力強さ、動き)」。この部屋の作品は、かなりぎりぎりまで作品の全容がわからず図面も引けなかったそうなのですが、結果的にリナさんが望んだ「工芸界のダイナミズムを象徴するような作品で締めたい」を見事に現実化してくれるものとなりました。

インパクト大!な第8室のガラス「探求」
インパクト大!な第8室のガラス「探求」

ちなみにリナさん、最近ではパリにあるパレ・ド・トーキョーのレストランも手掛けていて、日本となんとなく縁があるもよう。洋服も日本のメーカーのものを着ていることが多く、その話を振ると「日本のクリエイターの洋服が大好きなのよ」と語ってくれました。いつもと違うフレンチスタイルのトーハクを、ぜひ楽しんでくださいね!
 

カテゴリ:2017年度の特別展

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posted by 熊谷美和(特別展室アソシエイトフェロー) at 2017年09月21日 (木)

 

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