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マーライ尊者の奇妙な冒険

このたびの 、日タイ修好130周年記念特別展「タイ ~仏の国の輝き~」では、タイの仏教美術を紹介し、日本の仏教美術とは異なった主題や造形、そして美意識を楽しんでいただこうと思っています。

そのひとつとして、ここに紹介するのは、マーライ尊者にちなんだ作品です。

「マーライってなに? ひとの名前なの? 」という方は多いでしょうが、東南アジアの民間で親しまれてきた仏教説話のキャラクターです。マーライはスリランカの僧侶で、天界や地獄に移動できる超能力をもっています。その能力を使って、彼は地獄で苦しむ人々に出会い、天界で弥勒菩薩と語り合い、人間界へと戻ったのち、人々に地獄の苦しみを述べて、弥勒菩薩の言葉を伝えて、功徳を積むことの大切さを説いたのでした。


そのマーライの物語を描いた「マーライ尊者チュラーマニー仏塔巡礼図」を見てみましょう。


「マーライ尊者チュラーマニー仏塔巡礼図」(ラタナコーシン時代・19世紀、タイ国立美術館蔵)
ラタナコーシン時代は、現在まで続いているタイの王朝時代です

2メートルの大画面絵画です。中央に白い塔があり、下方の塔のまわりに天人たちが集まり、上方に雲のなかを飛ぶ天人たちが描かれています。ここは天界のひとつ三十三天。塔はチュラーマニー仏塔といい、仏陀の4本の犬歯のうちの1本をまつっています。

塔に向かって左側には坊主頭の人物と、緑色の肌をした高貴な身なりの人物が座って対話しています。この坊主頭の人物こそがマーライです。そして異色肌の貴人は、なんとインドラ神です。


(中央部分)三十三天の中央にそびえる白亜のチュラーマニー仏塔。天人たちが合掌して塔をおがんでいます。その塔のかたわらではマーライとインドラ神が語り合っています


左がマーライ、右はインドラ神

インドラ神は帝釈天ともいい、三十三天に住んでいる雷神です。こともあろうにマーライは、のこのこと三十三天に現われて、インドラ神と対等に会話をしているのです。われわれ凡人にはできないことを平然とやってのける。そこに人々はあこがれの気持ちを抱いたのでしょう。

さて、そんな両者の会話に加わろうとして、もっと上のほうにある兜率天(とそつてん)という天界から弥勒菩薩が天人たちを従えて降下してきます。


(上部部分)ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!! すさまじいとどろきとともに弥勒菩薩が兜率天から降ってきます

この作品が描いているのは、マーライが上空の天人の一団を指さして、どれが弥勒菩薩なのかをインドラ神に尋ねている場面とされています。このあと、マーライは弥勒菩薩と対話をして、その言葉を人々に伝えに行くのです。
 

「プラ・マーライ経」という経典の挿絵にも同様の場面が描かれており、こちらは人物にフォーカスがあたっています。なので、全体の雰囲気は仏塔図で見て、人物の顔やすがたは経典で見ると分かりやすいでしょう。


「プラ・マーライ経」(トンブリ―時代・18世紀、タイ国立図書館) [展示期間:7月30日(日)まで(この場面は7月17日〈月・祝〉まで)]
トンブリー時代は、ラタナコーシン時代の前にあった短期間の王朝時代です

 


(左部分)マーライは「やれやれだぜ。こんなところで弥勒さんに出くわすとはな」とつぶやいたのち、ビシィッと天空を指さして、一体どれが弥勒菩薩なのかをインドラ神に問います


きらびやかな装身具を付けた弥勒菩薩が、身体を輝かせ、両手を合わせ、左右の足を大胆に折り曲げたポーズで、天人たちを従えて降下してきます
 

このドラマチックなシーンを通じて、タイの民衆的な仏教説話の世界をお楽しみください。


 

カテゴリ:研究員のイチオシ「タイ ~仏の国の輝き~」

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posted by 猪熊兼樹(出版企画室主任研究員) at 2017年07月12日 (水)

 

 

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