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トーハクで建築探訪~黒田記念館~

トーハクの正門を正面にみて、左へ進んだ角に、黒田記念館があります。
その成り立ちは、日本近代洋画の父といわれる黒田清輝の遺言によります。


黒田は、1924(大正13)年に没する際、遺産の一部を美術の奨励事業に役立てるよう遺言しました。
それをうけて、1928(昭和3)年に竣工したのが、黒田記念館です。
その2年後の1930(昭和5)年には、美術に関する学術的調査研究と研究資料の収集を目的とした美術研究所(現在の東京文化財研究所)が設置され、日本・東洋美術に関する調査研究業務が行われてきました。



黒田記念館外観
イオニア式オーダーの列柱がデザインされた外観。
昭和初期の建築によく見られる外壁のスクラッチタイルが特徴です。



設計は、当時、黒田と同じ東京美術学校で建築の教授を務めた岡田信一郎です。
旧歌舞伎座や明治生命館、鳩山会館などを手がけたことで知られています。
上野公園内に建てられた旧東京府美術館(1926(大正15)年、現存せず)や旧東京美術学校陳列館(1929(昭和4)年、現東京藝術大学大学美術館陳列館)とともに、黒田記念館は岡田の美術館三部作と呼ばれています。


それでは、内部をご案内しましょう。



入口は、上部に半円形の窓をもつ扉と、それに呼応するようなアーチをくぐります。


黒田記念館階段

階段の手すりに見られるアールヌーヴォー風の装飾は、岡田信一郎の弟子で、後に東京美術学校で教鞭をとった建築家・金沢庸治のデザインです。

2階には、二つの展示室があります。


黒田記念室

開館当初より設けられている黒田記念室には、遺族より寄贈された作品に加え、アトリエも再現し、黒田の画業を一覧することができます。
天窓からの自然採光となっており(現在は人工照明)、当時の美術館建築のありようを今に伝えています。
天井の漆喰装飾にもご注目ください。


特別室
2015(平成27)年のリニューアルオープンで新設された特別室は、落ち着いた色調の部屋になっています。
黒田の代表作「湖畔」や「智・感・情」、「舞妓」(以上、重要文化財)、「読書」の4つの名品を展示保管、年3回のみ公開する贅沢な空間です。


2002(平成14)年に国の登録有形文化財に指定されました。



黒田記念館は入館無料、
開館時間は9:30~17:00(入館は16:30まで)、
月曜休館(月曜が祝日の場合は翌平日休)です。

お気軽にお立ち寄りください。
 

カテゴリ:展示環境・たてもの

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posted by 奥田 緑(広報室) at 2017年06月14日 (水)