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「古代ギリシャ」海シリーズ(3)

「古代ギリシャ」海シリーズ3回目、私が注目したのは2回目の瀬谷さんと同じく第2章のミノス文明(紀元前3200年頃~紀元前1100年頃)。ミノス文明はエーゲ海の南に浮かぶクレタ島に花開いた開放的な海洋文明です。

この章では、海を連想させるモチーフが使われている作品がたくさん展示されていますが、中でも今回注目したのは蛸(タコ)。

海洋様式の葡萄酒甕
前1450年頃(後期ミノスIB期)
クレタ島、ザクロス宮殿出土
イラクリオン考古学博物館蔵 (C)The Hellenic Ministry of Culture and Sports - Archaeological Receipts Fund



海洋様式の葡萄酒甕(部分)
見よ、このダイナミックな動き!


この甕にはタコが3匹、触手をいっぱいに広げ、うねうねとした様子で描かれています。そしてその触手の間には巻貝や海藻が描かれており、豊かな海中の様子が想像できます。このタコの動き、普段から実際によく目にしていないと、なかなかこの躍動感のある表現はできないのでは、と思います。
私事で恐縮ですが、先日海釣りに行き、タコを釣り上げました(釣ったというか勝手に釣れました)。この絵はその時の触手のにゅるっとした動きを実に上手く表現しているな、と感じました。


勝手にタコが食いついてきた! 清水港沖にて

ミノス文明に続く第3章のミュケナイ文明でもタコをモチーフにした作品は複数出てきます(下の3件)。それぞれ見ごたえのある作品ですが、タコの動きに関してはこの甕に描かれているタコの持つ勢いには勝てません。その差はミュケナイ文明が、ミノス文明と違い、海に近い場所でなくギリシャ本土で栄えた文明だからでしょうか。


 
鐙壺
後期ヘラディックIIIC期(前1200年~前1100年)
アッティカ地方、ポルト・ラフティ、ペラティの墓地出土
ブラウロン考古学博物館蔵 (C)The Hellenic Ministry of Culture and Sports - Archaeological Receipts Fund



タコ形飾り板
前16世紀後半(後期ヘラディックI期)
ミュケナイ、円形墓域A(4号墓)出土
アテネ国立考古学博物館蔵



円形飾り板
前16世紀後半(後期ヘラディックI期)
ミュケナイ、円形墓域A(3号墓)出土
アテネ国立考古学博物館蔵


この甕は葡萄酒甕とあるように、ワインを貯蔵していた甕です。同じクレタ島からは、ワインを造るための葡萄圧搾機と桶も多数出土しています。既にこの時代にはワインが沢山作られていたこということですね。アルコール好きの私としてはどんな味だったか、大変気になります。きっとタコ料理にも合うものだったに違いありません。


葡萄圧搾機と桶
後期ミノスIB期(前1450年頃)
葡萄圧搾機(上):クレタ島、ザクロス、家B出土
桶(下):クレタ島、ザクロス宮殿(台所)出土
シティア考古学博物館
同じく第2章に展示中です。


古代ギリシャ展のグッズ売り場ではこの歴史あるワイン作りの国、ギリシャのワインを販売しています。ギリシャでは現在も40種類以上の品種がワイン造りに利用されており、国際的コンクールでの受賞も多く世界的に注目されているそうです。


古代ギリシャ展グッズ売り場のワイン

古代ギリシャ展をご覧になった後は、青いエーゲ海を思い浮かべながら、ギリシャ風に調理した(?)タコなどをつまみにギリシャワインを楽しんでみるのもいいですね。

因みに先日釣れたタコは丸ごと茹でてから、刺身と酢の物と唐揚げにして、ビールと冷酒で美味しくいただきました。

古代ギリシャ展、9月19日(月・祝)の閉幕まで残り1ヶ月を切りました。この展覧会、ギリシャ本国からの作品325件中9割以上が日本初公開という質、規模ともに凄い展覧会です。まだご覧になっていない方、ぜひともお見逃しなく!
 

カテゴリ:2016年度の特別展

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posted by 武田卓(広報室) at 2016年08月19日 (金)