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特集陳列「東京国立博物館コレクションの保存と修理」

14回目となりました恒例の特集陳列「東京国立博物館コレクションの保存と修理」(3月4日(火)~3月30日(日)、平成館企画展示室)。今回の展示は例年と比べ、分野だけでなく修理の内容が多岐にわたっており、文化財修理の奥深さを見る事ができます。

例えば博物館ニュース2・3月号にも紹介している「応急修理」です。本格修理を病院での大手術に例えると、ホームドクターによる簡易な処置がこれにあたります。我々は健康を維持するにあたり、少し風邪をひいた程度でいきなり大病院にはいきませんよね?とりあえず近所の主治医に見せて判断をあおぎ、負担の少ない処置を施すことで健康を維持します。文化財も我々の健康と同じで、軽微な処置を行うだけで周辺環境を整えられたり、見やすく安全に取り扱えるようになります。その結果、ハンドリング時に起こる事故の確率が下がり、文化財を安全に末永く伝えることができます。当館ではこれらの処置を常常勤のアソシエイトフェローを中心に行なっております。展示では作品とともに修理の内容についても詳細に紹介しています。

その他にも江戸時代に書かれた書物の内容とX線による調査の結果を参考にし、最新の合成樹脂を用いて行われた修理(壷鐙)、大量の書類を短い時間で処理した修理(重要雑録)などの例をご覧いただきます。また、青磁鳳凰耳瓶と東洋館5室で同時期に展示中の砧青磁の名品「馬蝗絆」をご覧いただくことで、同じ症状に対する室町時代の修理と平成の修理を比較することができます。

青磁鳳凰耳瓶  馬蝗絆
(左)青磁鳳凰耳瓶(修理後) 中国・龍泉窯 南宋~元時代・13世紀 松永安左エ門氏寄贈
(右)重要文化財 青磁輪花碗 銘 馬蝗絆 中国・龍泉窯 南宋時代・13世紀  三井高大氏寄贈(東洋館5室にて、5月25日(日)まで展示中)


例年同様に修理で全体が整った作品をご覧いただくだけではなく、皆様のお宅にある、ちょっと風邪を引いたお宝を末永く健康に保つ秘訣を見つける事が出来るかもしれませんよ。
忙しい年度末の短い期間ですがぜひ、足をお運びください。

関連事業

「東京国立博物館コレクションの保存と修理」
平成館 企画展示室  2014年3月4日(火)   14:00 ~ 14:30
「東洋書画の修復と保存」
東洋館 TNM&TOPPAN ミュージアムシアター  2014年3月11日(火)   14:00 ~ 14:30
「展示を支える修復技術-マウント、書見台、保存箱」
東洋館 TNM&TOPPAN ミュージアムシアター  2014年3月25日(火)   14:00 ~ 14:30
 

カテゴリ:研究員のイチオシ保存と修理

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posted by 荒木臣紀(保存修復課主任研究員) at 2014年03月04日 (火)