トーハクくんの「なるほー!人間国宝展」その3
ほほーい!ぼくトーハクくん!
今日は東洋館にいるユリノキレポーターと中継がつながっているんだほ。さっそく呼んでみるほ。
ユリノキちゃーん!
はーい。こちらユリノキちゃんです。私は今、東洋館1階のレストランゆりの木に来ています。
こちらでは、「人間国宝展」特別メニューを食べることができるんですよ。
人間国宝展限定「ゆずと苺のムース」
コーヒーまたは紅茶付 900円(税込)
単品 500円(税込)
ご覧ください!とっても美味しそうでしょ!
ゆずと苺の二層のムースが溶け合ってからまって、最高のハーモニー!ん~、まさに国宝級!
これは、柿右衛門様式で特徴的な白磁と鮮やかな赤からインスピレーションを受けたんですって!
展覧会のあとはぜひレストランゆりの木で、作品を思い出しながら至福のひとときをお過ごしください。
それでは、展覧会場のトーハクくんにお戻しします!
ユリノキちゃん、ありがほー!
さて、今日は特別展室の横山さんといっしょに「人間国宝展―生み出された美、伝えゆくわざ―」を見に行く予定なんだけど、あれれまだ来ていないみたいだほ…
横山研究員(以下ヨ):トーハクくーん!こっちこっち!
あれ、横山さんの声がするほ、どこどこ?
ヨ:ここです!
平成館のエントランスに入って右手奥にある企画展示室では、特集陳列「人間国宝の現在(いま)」を開催しています。
今日はこちらの展示をご紹介しますね。
(でれでれ)いや~横山さん、小憎い演出をしてくれるもんだほ~。よろしくお願いしますほ。
ところで、「人間国宝の現在(いま)」は、特別展示室の「人間国宝展」とはどこが違うのだほ?
ヨ:特別展示室では、すでに亡くなられた人間国宝の方の作品をご覧いただけますが、企画展示室では現在ご活躍中の人間国宝の作品を展示しているんです。
両会場を回ると、工芸分野の全人間国宝(*)の作品を見ることができるんですよ。
(*刀剣研磨、手漉和紙を除きます。)
おぉすごいほ!特別展だけ見て帰ってしまいそうだけど、こっちも見逃してはいけないほ!
さて、この展示のなかで、横山さんのおすすめ作品はどれだほ?
ヨ:ひとつ選ぶのは難しいのだけど、図録の執筆のために最初にインタビューをさせていただいた吉田美統(よしたみのり)先生の作品はとても印象深いです。
釉裏金彩更紗文花器 (ゆうりきんさいさらさもんかき)
吉田美統 平成24年(2012) 個人蔵
わー、とってもきれいなお花が描いてあるほ。
ヨ:トーハクくん、これは「描いてある」のではないの。薄く切った金箔が貼られているの。
えっ?きんぱくなの?
でも金箔って薄いから、こんなに細かい模様が切れるわけがないほ。
ヨ:それが出来ちゃうのが人間国宝なのよ。
この作品は出来上がるまでにとても手間がかかっているの。
作品の表面をよく見てみて。うっすらと縞模様になっているでしょう?
これは、まずお皿を素焼きして、さらに高温で本焼きします。
その上に釉薬をストライプ状に塗って、一度焼きます。
その上に淡い釉薬を塗って、また焼きます。
えっと、ここまででもう4回焼いたほ。
ヨ:そうね。ここまで来たらやっと金箔の模様の下図をお皿の上に施します。
その後、模様の形に切った極薄の金箔をお皿に貼り付けていきます。ここで金箔を付けるために一回焼きます。
その上にガラス質の透明釉を塗って、また焼きます。
ああ!6回も焼いているほ!こんなに大変なこと、ボクには出来ないほ!
しかし、どうしてそんなに何度も焼く必要があるほ?
ヨ:金箔って、こすると擦れてきちゃうでしょう?
だから、金箔の上から透明釉をコーティングしてあげるのよ。
なるほ。金箔が釉薬でサンドイッチされているんだね。
ヨ:そう!それが「釉裏金彩」という技法です。
磁器に金箔をつけるのはとても難しい技術なの。吉田先生は、それを飽くなき探求心で成し遂げた方なのよ。
吉田先生って、お話してみてどんな人だったほ?
ヨ:私のような若輩者にも気さくに、そして丁寧に接してくださる、とても謙虚な方でした。
作品を見ればわかるけど、作品にかける思いは真摯でまっすぐです。
それでは恒例の質問だほ!
横山さんがキャッツアイだったら、そうだなあ、やっぱり三女の愛ちゃんがいいかなあ?
じゃなかった、キャッツアイだったらどの作品を盗みたいほ?
ヨ:愛ちゃんいいですね(笑)。
どれか1点と言われてしまうとすごく迷いますが、私は陶磁が専門なのでやはりこの作品を選びます。
白瓷面取壺(はくじめんとりつぼ)
前田昭博 平成12年(2000) 文化庁蔵
前田先生は、日本人にしか作れない「日本的な白瓷(はくじ)」を追求していらっしゃるの。
日本の絵画は、余白や間を大事にするでしょう?この方はやきものでそれを表現しています。
無駄なところを削って削って、これ以上行き過ぎたらだめ、というぎりぎりのところまで削って、そして全体のバランスを整えていきます。
極限まで研ぎ澄まされ、洗練されたフォルムが美しいですね。
でも、冷たい感じがしないね。ころんとしていてかわいいほ。
ヨ:そうでしょ?なんだかタマゴみたいで、親しみを感じるわね。
これは前田先生のお人柄そのもののように感じます。柔和で温かみのある方なんです。
前田昭博先生の工房にて
そうかあ!
今まで小山さん、伊藤さん、横山さんにインタビューしてきたけど、3人とも言っていたのは
「人間国宝は決しておごることなく謙虚で、作品づくりに関してはチャレンジャーで、そしてあったかい人」だってことだほ。
憧れるほー!ボクもそういうかっこいいオトナになりたいほ!
ヨ:そうね。今からがんばれば、トーハクくんもなれるかもね!
うほー!横山さんに応援されたらがんばれちゃいそうだほー!
そういえばね横山さん、レストランゆりの木でね、今なら人間国宝展特別メニューがあるらしいんだけど、よかったらこれからボクと一緒に甘いひとときでもどうだほ?
ヨ:あの、私、今仕事中なんだけど…
ちょっとトーハクくんっ!
げっ、ユリノキちゃん!どうしてここに?!
なによっ!横山さんに甘えた声出しちゃって、どういうつもりっ?!
ユリノキちゃん誤解だほ!これはその、あの、なんだ、一時の気の迷いというか…
「なるほー!人間国宝展」はこれで終了です。ご愛読有難うございました。ぷいっ!
あれ、怒ってるほ?
やだなあ、笑ってるほうがかわいいほ。ねえユリノキちゃーーん!!
ヨ:あらら。
「人間国宝展―生み出された美、伝えゆくわざ―」と、特集陳列「人間国宝の現在(いま)」は、2月23日(日)までです。どうぞお見逃しなく。
横山梓(よこやまあずさ)特別展室研究員。専門は陶磁です。
作品のことも女心も、まだまだ勉強が足りないと思うトーハクくんなのでした。
カテゴリ:研究員のイチオシ、news、2013年度の特別展
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posted by トーハクくん at 2014年02月18日 (火)