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1089ブログ

トーハクくん、“じょうもん土器先輩”に会いに行く

トーハクくん
ほほーい!ぼくトーハクくん!
今日は井出研究員に、“じょうもん土器先輩”のところへ連れて行ってもらうほ。
どんな先輩なのか…土器土器するほー!


井出研究員とトーハクくん
こんにちは!トーハクくん。

トーハクくん井出さん、今日はよろしくお願いしますほ!
その前に…。そもそも土器って、なんだほ?

井出研究員土器とは、粘土をこねて形を作り、焼いてできたうつわのことだよ。素材はトーハクくんと一緒だね。
土器が発明されたことによって、煮る、炊く、蒸すといった基本的な調理ができるようになり、人々の食生活は大きく改善され、暮らしが安定するようになったんだよ。スープを食べられるようになったのも、土器のおかげなんだよ。

トーハクくんほー。僕もうつわにされていたら、「踊るはにわ」ならぬ「踊るうつわ」なんてよばれていたかもしれないほ…。
じゃあ、「じょうもん」というのは、どういう意味なんだほ?

井出研究員縄文時代に使われた土器が縄文土器と呼ばれているよ。
ちなみに縄文土器の呼び名は土器の表面の縄目の文様に由来しているんだ。
縄目以外にも、竹や木、貝がらなどを加工して使ったり、そのまま押しつけたりした文様もあるよ。

トーハクくんなわめ?もんよう? むー、いったいどんなふうに作られているんだほ?

井出研究員(キリッ)縄文土器は、粘土をこねて、ドーナツ状のわっかをつくり、それをだんだんと重ねてうつわの形をつくります。
土器がある程度乾いたら、表面に、縄を転がしたり、押し付けたり、竹や木、貝がらなどを使ったりして、いろいろな文様を飾ります。日陰でしばらく乾かしてから、野焼きで焼いて完成です。
中には、さらに赤い顔料で模様を描いたり、漆を塗って表面をコーティングしたりと入念に仕上げているものもあります。

トーハクくんほほー。ドーナツ… いや、縄で文様をつけるから、「じょうもん」なんだね!
ところで井出さん、ここにいる“じょうもん土器先輩”たちは、人間の顔や動物の形みたいなものがついているけど、なんでだほ?

井出研究員(ふたたびキリッ)縄文時代には土器のほかに、人をかたどった土偶や動物の形の土製品があります。
これらは粘土で作った、いわば縄文時代のフィギュアともいえるでしょう。現代のフィギュアと大きくちがうのは、縄文時代の土偶や動物形土製品は、おもにお祈りやまじないといった特別な場面で使われた可能性が高いのです。たいていの土偶がバラバラの状態で発見されるのは、こうした場面でわざと壊されているからだと考えられています。
人や動物の姿を土器に飾るのは、縄文時代はじまりの頃までさかのぼります。最初は小さな飾りだったものが、しだいに土器の目立つ部分に、大きく、はっきりと飾られていくようになります。今から4500年位前の勝坂式土器(かつさかしきどき)とよばれるものは、そういった人物や動物文様が流行した頃の代表例です。

トーハクくんほほー。こちらの山梨県北杜市出身の“じょうもん土器先輩”たちは、カツサカシキ?から選ばれし先輩たちなの?

井出研究員そうだね。まずはこの土器から見ていきましょう。

トーハクくん顔がふたつ、見えるほ?



井出研究員土器の口のところと胴のところに、顔のような装飾が見えるよね。顔以外にも土器の表面の盛り上がった部分や線状の文様をよくみると、人間の体をまねたような文様があるよ。
胴のところの顔は、その人体をあらわしたような文様からこちらをのぞきこんでいるようにも見えるね。
この土器は、赤ちゃんがお母さんのおなかからまさに生まれ出ようとする、その瞬間をあらわしているとして「出産文土器」とも呼ばれているんだ。土器の口の部分についた顔が、お母さん、胴のところの顔が赤ちゃんというわけなんだ。
縄文人の安産祈願や豊饒への願いが込められていると考えられているよ。


顔面把手付深鉢形土器 山梨県北杜市 津金御所前遺跡 5号住居跡出土
縄文時代(中期)・前3000~前2000年 山梨・北杜市教育委員会蔵


後ろ側にも同じような顔の文様がついているんだ。


展示室では見られない、後ろ側

トーハクくんなんと!生命誕生の神秘! じょうもんの先輩たちは、土器に祈りを表現したんだね!


井出研究員次は、こちら。



トーハクくんこ、これは!ぼくの大好物のクッキーみたいだほ!!おいしそうだほ~(ヨダレ…)


井出研究員トーハクくん、食いしんぼうなんだね…(汗)。
たしかにクッキーみたいなのが、前と後ろに二つけられているよ。


人形装飾付深鉢形土器 山梨県北杜市 寺所第2遺跡 T-11号住居跡出土
縄文時代(中期)・前3000~前2000年 山梨・北杜市教育委員会蔵

(左が展示室でご覧いただける姿、右は後ろ側)

二つの顔は表情がまったく違うんだ。
一方の顔は、眉をひそめてつりあがった目元、口を一文字につぐんで見るからに怒っているようだね(下の右側の写真)。もう一方の顔は、目尻が垂れて口元は弓なりに上がって、まるで微笑んでいるように見えるね(下の左側の写真)。この土器のように、一つの土器に、対照的な顔や人体の文様が二つ以上、施されることがあるんだ。


右が展示室では見られない、後ろ側。表情を見比べてみてください。

それは男女の違いや、カミとヒトなどを対照的にあらわしているとも考えられているんだ。
この土器のほかにも、展示室には、一方はお尻が大きく、もう一方は小さく表現された二つの人体文様をもつ土器もあるよ。これは男女の違いを表しているのかもしれないね。


トーハクくんおや、こっちは、ずいぶんとフクザツなかたちをしているほー?


重要文化財 人形装飾付異形注口土器 北海道北斗市茂辺地出土
縄文時代(後期)・前2000~前1000年 東京国立博物館蔵

井出研究員これはボールのような丸い胴体に、橋をかけたような頸(くび)がついている、見るからに変わった注口土器(ちゅうこうどき)だね。
注ぎ口の部分がなくなってしまっているけれど、前後に顔、左右に人形、合計4人の顔が表されているんだ。
(展示室ではこの土器の細部を三次元計測機によって計測し展開させた図面を掲示しています)



トーハクくんチューコー土器?

井出研究員注口土器は土瓶(どびん)や急須の形に似ていることから、液体を注ぐ容器だったと考えられているよ。


トーハクくんほほー。井出研究員だったらお酒を注ぐところだほ…(ニヤニヤ)。

井出研究員ん?何か言った?
ところで、この土器は配石遺構(はいせきいこう)という、石で囲まれた特殊な遺構の周辺で発見されたんだよ。
配石遺構は、人が亡くなった際に行われた儀礼で使われた場所とも考えられているんだ。

トーハクくん今も昔も亡くなった人を偲んでお酒をのむのにかわりがなかったのかな?
土器についている顔は、亡くなった人の顔に似ているのかな?

井出研究員(最後にキリッ)今まで見てきたこれらの土器に、わざわざ多くの時間と労力をかけて、人や動物をあらわした装飾を施すはっきりとした理由は残念ながらよくわかっていません。
しかし、土偶や土製品ではなく、あえて、うつわに装飾を施したことに縄文人からの強いメッセージを感じます。
こうした土器が、どのような場面でどのように使われたのか、最新の発掘調査の成果を見ながら考えてゆかねばなりません。

トーハクくん井出研究員がそのナゾを解き明かしてくれるのを期待するほ!
今日はいろいろな“じょうもん土器先輩”を紹介いただき、ありがとうございました!

井出研究員おすすめ
井出研究員お気に入りの“顔面把手先輩たちと記念撮影


特集陳列「縄文土器に飾られた人物と動物
平成館 考古展示室   2013年7月9日(火) ~ 2013年10月27日(日)

自由研究応援キャンペーン ミュージアムシアター&考古学に挑戦!スタンプラリー 8月10日(土)~9月1日(日)
1. 小・中学生はミュージアムシアター無料(通常300円)
上演プログラム:
土偶 縄文人の祈りのカタチ─バーチャルで土偶に遭遇─
洛中洛外にぎわい探訪 徳川の威光と二条城障壁画─大名がひれ伏した二条城の鷹と虎─

2. スタンプラリー「考古学に挑戦!」で土偶ステッカーをプレゼント

 

カテゴリ:研究員のイチオシ考古

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posted by トーハクくん at 2013年08月10日 (土)