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特集陳列「平成24年度 新収品」より─葡萄図

6月25日(火)から始まる、特集陳列「平成24年度 新収品」(~7月7日(日)、本館特別1室・2室)は、昨年度、当館が購入した作品や、当館に寄贈された作品等を皆様にご披露する展示です。
その中に、葡萄図という作品があります。

葡萄図
重要美術品 葡萄図 没倫紹等筆 延徳3年(1491)

サラサラっと描かれた一房の葡萄という感じの絵です。
作者は、没倫紹等(もつりんじょうとう)という室町時代の禅僧です。彼は、とんちで有名な一休の弟子です。ペンネームとして墨斎や拾堕という号を用い、一休同様に、水墨画にも筆を振るいました。 

この絵の右下の部分を見ると、作者は筆をくるくると回転させ、蔓の形を表現しています。

葡萄図(部分)


3枚ほど描かれた葉は、枯れつつあるためか、その輪郭ははっきりしません。葡萄の実は、濃淡の異なる墨面を組み合わせて描かれていますが、
その墨のにじみぐあいを見ていると、とても味わいのある、いい絵に思えてきます。

葡萄図



上方には、没倫自らが書き記した文章(賛)があります。それによると、今年の秋は十日も風雨が続いたが、葡萄棚は傾くこともなく多くの実をつけたといいます。
彼はある日、その葡萄の一房を書斎に持ち込み、飾らぬ筆づかいで描いたあと、賛を書き添えて、親しい友人か、弟子にでも贈ったのでしょう。
生活と絵画、文学が密接に結び付いた当時の禅僧の暮らしぶりが、この作品から垣間見えてきます。
 
 

カテゴリ:研究員のイチオシ

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posted by 救仁郷秀明(登録室・貸与特別観覧室長) at 2013年06月21日 (金)