このページの本文へ移動

1089ブログ

東洋の青磁

現在、本館14室で展示中の、東京国立博物館140周年特集陳列「東洋の青磁」(~2012年7月29日(日))の展示作品についてご紹介します。

青磁輪花鉢は、コレクター横河民輔氏が昭和9年(1934)に紆余曲折の末に入手した際、「この鉢が入って、僕のコレクションは画龍点睛だよ」と語ったというエピソードがあります。その当時このように貫入と呼ばれる釉薬のひび割れが生じた青磁は注目されていませんでした。南宋時代(1127~1279)に都が置かれた臨安(現在の浙江省杭州)に郊壇下官窯(こうだんかかんよう)が発見され、この種の青磁は南宋時代に宮廷向けに焼かれた官窯の製品であることが明らかになりました。
この鉢は昭和12年(1937)に当館に寄贈され、以来館を訪れる多くの人々に親しまれています。


重要文化財 青磁輪花鉢 南宋官窯 南宋時代・12~13世紀 横河民輔氏寄贈

耀州窯(ようしゅうよう)は陝西省銅川市(せんせいしょうどうせんし)に位置し、北宋時代にオリーブグリーンの釉下にきびきびとした文様が刻まれた青磁を焼きました。このような青磁は、昭和初期には文献に名高い汝窯(じょよう)の青磁ではないかと考えられたことがありますが、戦後耀州窯が発見され、この種の青磁の中心的な生産窯であったことが明らかになりました。


青磁唐草文香炉 耀州窯 北宋時代・11~12世紀 広田松繁氏寄贈


耀州窯は中国の窯址の中でも、学術的な発掘が最も進んだ窯の一つです。調査の成果により、その起源は唐時代にまで遡り、五代(907~960)には文様の無い、青緑色の青磁が焼かれていたことが判明しました。


青磁碗 耀州窯 五代~北宋時代・10~11世紀 島田謹一郎・みつ子氏寄贈

この種の青磁は五代の後周の官窯とされる柴窯、あるいは北宋時代に都開封の東南にあったとされる東窯との関係が取りざたされています。陶磁史研究の進展により、幻の名窯は少しずつその実像が明らかになってきています。


国宝 青磁下蕪瓶 南宋時代・13世紀 アルカンシエール美術財団蔵

国宝に指定されている青磁下蕪瓶は、かつて南宋官窯の一つである修内司(しゅうないし)官窯の作ではないかと考えられていましたが、その後杭州に老虎洞窯址が発見され、修内司官窯説は否定される方向にあります。ただし、龍泉窯においてもこの瓶と完全に一致する資料は発見されていません。この瓶のもつ気品と風格をどのように解釈するか、中国の青磁の歴史は、核心に迫る部分にまだまだ大きな謎が残されています。


(関連事業)
列品解説 国宝 青磁下蕪瓶について 2012年6月1日(金) 当日受付

カテゴリ:研究員のイチオシ

| 記事URL |

posted by 今井敦(博物館教育課長) at 2012年05月28日 (月)