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博物館でお花見を(陶磁の名品)

日本人が愛してやまない桜。
桜の魅力は盛りが短いことにあるのかもしれません。
毎年毎年満開の桜に心をときめかせ、散りゆく風情を惜しみながら楽しみます。
陶磁器の上にあらわされた桜にも、われわれ日本人の心情が投影されたさまざまな趣向が凝らされています。



色絵桜樹図透鉢 仁阿弥道八作 江戸時代・19世紀
(~2012年5月6日(日)展示)


こちらは仁阿弥道八(1783~1855)の作品。白泥と赤彩の点描で満開の桜が描かれています。ちょっと印象派っぽいですね。鉢の内外に描かれた桜が重なり合うことによって奥行きを生み出し、たくみに配された透かしを通して遠景が見え、桜でいっぱいの空間が生み出されています。
展示場では器を動かすことはできないので、立ち位置を変えながらお楽しみください。



色絵桜川文徳利 伊万里 江戸時代・17世紀 広田松繁氏寄贈
(~2012年5月6日(日)展示)


こちらは伊万里焼の徳利です。江戸時代の初頭に朝鮮半島から渡来した陶工によって磁器焼成の技術が伝えられ、17世紀半ばには中国から色絵の技術が導入されました。
器面を曲線で帯状に分割し、毘沙門亀甲や唐草などのいわゆる祥瑞文様と水面に散る桜の花とを交互に描いています。
文様構成は中国で明時代末に焼かれた祥瑞と呼ばれる磁器に倣っているわけですが、ここではさらに、流れるような捻文に流水のイメージが重ねられています。



色絵桜樹図皿 鍋島 江戸時代・18世紀
(~2012年5月6日(日)展示)


領内に有田という日本随一の磁器の産地をもつ鍋島藩は、藩窯を置いて将軍家への献上品や大名などへの贈答品を焼きました。技術、意匠のあらゆる面で洗練をきわめ、大きさや形は厳格に規格が守られました。文様装飾に染付と色絵とを組み合わせたものは色鍋島と呼ばれます。
これは色鍋島の七寸皿です。桜の花の赤い線は、淡い染付の線の上に描かれています。絢爛豪華な色彩美を追い求めるのではなく、あえて色数を限定し、格調高い意匠に仕上げている点が色鍋島の大きな特色です。



色絵花筏図皿 鍋島 江戸時代・18世紀
(2012年3月27日(火)~6月24日(日)展示)


こちらも色鍋島です。花筏とは、本来散った桜の花びらが水面に流れつづくさまを筏に見立てていう語で、花筏の言葉のままに、水面に桜の花と筏の図を大胆に組み合わせて意匠化しています。鍋島焼ならではの洗練された感覚で、散りゆく桜の風情が表現されています。



色絵唐花文皿 鍋島 江戸時代・17~18世紀
(~2012年5月6日(日)展示)


外周には中国の空想上の花である唐花が描かれています。このように中央をあえて白抜きにする意匠は鍋島焼が得意としたところです。
お皿に盛られた、春を感じさせる料理やお菓子を食べ終えて、空いたお皿にふと目をやると、真ん中に桜の花が浮かび上がるという、おしゃれな趣向です。
 

カテゴリ:研究員のイチオシ博物館でお花見を

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posted by 今井敦(博物館教育課長) at 2012年03月25日 (日)

 

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