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いろいろな龍に会えます(特集陳列「天翔ける龍」4)

特集陳列「天翔ける龍」(~2012年1月29日(日))は、おかげさまでたくさんの方々にお楽しみいただいています。
本館2階、中央の階段をはさんだ2つの部屋で開催しています。すぐ隣ではないのでどうぞお間違いのないように。あわせて77件の作品を展示しています。そんなに龍ばかりで面白い?と思われるかもしれませんが、いろいろな龍がいます。


一般になじみの深い龍はこれですね。現在、本ウェブサイトのコンテンツ「投票」の「トーハクの龍ベスト12」でトップを行くのは「博物館に初もうで」のポスターになったからでしょうか。
 
龍図屏風(龍虎図屏風のうち 部分) 曽我直庵筆 安土桃山~江戸時代・17世紀


では以下、個性派の登場です。
翼のある龍はご存知ですか?予告ブログ第1回で紹介しました。応龍という名前です。龍の中でも格が高く、雨を降らせる力があります。
  
(左)陣羽織 猩々緋羅紗地応龍波濤模様(部分) 江戸時代・19世紀 高木キヨウ氏寄贈
(右)和漢三才図会(部分) 巻45、46 龍蛇類・介甲類亀蟹属 江戸時代・正徳2年(1712)成立



角、鱗のない龍はいかがでしょう。螭龍(ちりゅう、あまりゅう)です。顔は猿のようです。なじみがないので皆さん探すのに苦労すると思います。

雲龍堆黒合子 中国 南宋時代・13世紀

 
雲龍堆黒合子(部分) 中国 南宋時代・13世紀

 
和漢三才図会(部分) 巻45、46 龍蛇類・介甲類亀蟹属 寺島良安編 江戸時代・正徳2年(1712)成立


象のように鼻の長い龍。これは名前がわかりません。舞楽面陵王の頭に乗っている龍は、腕や脛があります。展示しているのは鎌倉時代のものですが、源流は中国にありますからこんな姿の龍も中国で生まれたのです。
十二神将の兜の上の龍も象に似ていますね。
 
(左)重要文化財 十二神将立像 辰神(部分) 伝浄瑠璃寺伝来 鎌倉時代・13世紀
(右)舞楽面 陵王(部分) 高野山天野社伝来 鎌倉時代・13~14世紀 水野忠弘氏寄贈



十一面観音のように頭上にたくさんの顔のある龍もいます。これも鼻が長いですね。
中世の龍は象のように長い鼻が多いようです。
 
摩尼宝珠曼荼羅図(部分) 鎌倉時代・14世紀


龍の爪の数にも注目してください。日本の作品は3本が多いのですが、中国では3、4、5本のものがあります。
このうち5本は特別な龍です。5本爪の龍は中国では皇帝の象徴とされ、皇帝の身の回りで使うものにしか表わしてはいけないきまりでした。
 
黄釉龍文軒丸瓦 中国北京市明永楽帝長陵 明時代・15世紀

この瓦は明時代の皇帝永楽帝のお墓の建物に使われたもので、爪は5本、そして皇帝しか使用できなかった黄色の釉薬がかけられています。


さて、かっこいい龍の代表は左。当館の龍コレクションのトップスターです。右もなかなかですね。どちらも5本爪ですから皇帝のための器です。
 
(左)重要文化財 龍濤螺鈿稜花盆(部分) 中国 元時代・14世紀
(右)龍濤存星輪花盆(部分) 中国 清時代・康煕年間(1662~1722)



ではこれはどうでしょう。
 
鉄砂雲龍文壺 朝鮮 朝鮮時代・17世紀 清水信子氏寄贈

龍の頭部を拡大しました。横向きの顔なのに目がふたつ見えています。ピカソの絵のようです。


次は正面向き。
 
染付雲龍図菊形皿 伊万里 江戸時代・18~19世紀 平野耕輔氏寄贈


正面向きの龍はむずかしいのです。それにしてもこの団子鼻とウミウシのような体。故宮博物院展に出ている皇帝の服に表わされた龍のような中国の絵を真似たのですが、うまく描けなかったのですね。しかしこれはこれで味わいがあります。


これは何?
 
双龍文環頭大刀柄頭 三重県四日市市糠塚山出土 古墳時代・6世紀 安田由松氏・安田專行氏寄贈


ではこれは?
  
双龍文環頭大刀柄頭 愛知県春日井市明神町 猪之洞古墳出土 古墳時代・6世紀 愛知県寄贈


少しわかりやすくなりましたね。何か2匹の小動物が珠をくわえているのです。これは龍なんです。古墳時代、朝鮮半島からこの種の大刀が伝わったけれども表わされているものが何かわからなかったのでしょう。とりあえず真似てみた。真似た国産のものをまた真似て、ということを繰り返すうちに幾何学模様のようになったのでしょう。


今回の特集で一番のゆるキャラはこれ。
  
鬼龍子 韓国ソウル市徳寿宮 朝鮮時代・19世紀 

顔をアップにすると…。

鬼龍子(部分) 韓国ソウル市徳寿宮 朝鮮時代・19世紀

これが龍?と誰もが思うでしょう。龍には9匹の子がいるといいますが、そのうちの1匹、鬼龍子(きりゅうし)です。高いところから遠くを眺めるのが好きといわれ、屋根の上にのせられていたものです。強いから魔除けになります。


いかがですか?変わったものを中心に紹介しましたが、もちろん皆さんお馴染みの姿の龍もたくさんいます。本ブログの「博物館に初もうで」シリーズの「天翔ける龍」1~3もご参照ください。

ブログ1で紹介しました、今回展示している「自在置物 龍」の動きを実感できる、疑似体験コーナーを設置しています。自在置物は実際に手で動かすことができるのですが、残念ながら実物で体験していただくことはできません。そのかわりに画面に映った龍をみなさんの手で動かしていただきます。


最後に図録の宣伝です。
この図録は特集陳列の作品を順番に掲載し、解説したものではありません。展示作品の8割ほどを掲載していますが、他の部屋に展示している作品、展示していない作品も含む、トーハクの龍の優品104件を収録しています。「東の龍、西のドラゴン」「龍のルーツ」「仏教を守る龍」「雲をおこす龍」「龍と虎」「龍と鳳凰」「龍と芸能」など23のトピックスに分けて作品を紹介します。この本をガイドにしてトーハクの龍制覇を目指してください。

カテゴリ:研究員のイチオシ博物館に初もうで

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posted by 浅見龍介(東洋室) at 2012年01月13日 (金)