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1089ブログ

トーハクでマジカル・アジア、始まります!

東洋館の秋フェス「博物館でアジアの旅」が、今年も始まります!
今年のテーマは「マジカル・アジア」(トーハクらしからぬ? キャッチーなタイトルですね)。

  

そして、やはりトーハクらしからぬ(?)ポスターとチラシです。
チラシに掲載された「呪いのわら人形」が一部で話題になっているようですが、
そもそも「マジカル」って何でしょうか?
今回のブログでは、そのあたりをご紹介いたします。

「マジック」と聞くと、手品ショーを思い浮かべるかもしれませんが、 ここでは魔術、呪術、不思議な力という意味の「マジック/magic」です。
魔術となると、今度は怪しげな呪術師の世界を想像してしまいますが、 実は私たちの日常にも「マジカル」な振る舞いは存在します。

「下の乳歯が抜けたとき、屋根に向かって投げました。」

「遠足の前日に、てるてる坊主を吊るしました。」

「大事な試合の日に、かつ丼を食べました。」

ある行為とその結果の関係がはっきりしていなくても、なんとなく信じてやってみる、希望的な願いを込めてやってみる。
このような経験におぼえがありませんか。
こうした習慣やゲン担ぎも、「マジック」ととらえることができます。

健康を維持し、災厄から身を守ろうとするとき、特に、現在のような形で科学や医学の知識が広まっていない社会の人々にとっては、「マジック」が必要不可欠かつ現実的な手立てでした。
東洋館に展示されている作品の多くには、アジアの人々の「マジカル」な願いと行為が込められています。

いくつかご紹介いたします。


鬼瓦
韓国慶州四天王寺跡出土 統一新羅時代・7~8世紀
(東洋館10室 2017年11月5日(日)まで展示)

パズズ像頭部
イラク カッシート王朝時代・前2千年紀後半
(東洋館3室 2017年10月22日(日)まで展示)


韓国、統一新羅時代の鬼瓦と、古代メソポタミアの悪霊パズズ。
双方ともに、インパクトのあるルックスで邪を払い、災難や病気を遠ざける力があるとされました。
このような魔除けアイテムは古今東西の社会で見ることができます。
「マジカル・アジア」でも各地の魔除けアイテムを展示します。


神官のシャブティ
エジプト出土 末期王朝時代・前664~前332年頃 百瀬治氏・富美子氏寄贈 エジプト出土 末期王朝時代・前664~前332年頃
百瀬治氏・富美子氏寄贈

(東洋館3室 2017年10月22日(日)まで展示)

三彩鎮墓獣
中国 唐時代・7~8世紀 横河民輔氏寄贈
(東洋館5室 2018年2月4日(日)まで展示)


シャブティは古代エジプト人が来世でいい暮らしをするためのアイテム。
呪文によって動き出し、あの世での労働を肩代わりしてくれる人形です。
鎮墓獣は、墳墓内の死者と副葬品を守護するために納められました。
このように、死後の幸せや安寧を願って制作された作品にも注目しています。

極めつけは、やはり「呪いのわら人形」でしょう。
上野公園のイチョウの樹に打ちつけてあったのを、当時の帝室博物館の職員が採集した資料です。


呪咀人形
東京上野公園発見 明治10年(1877)
(東洋館12室 2017年10月15日(日)まで展示)


誰かを恨んで、マジックによってその人を貶めようとしたのでしょうか。
現状の資料には6本の釘が確認できますが、記録によれば7本の釘が刺さっていたとのこと。上野公園のイチョウの古木に今でも刺さっているかもしれませんね。

さて、「マジカル・アジア」は、東洋館で行われている3本の特集(5室「唐三彩」、12室「チベットの仏像と密教の世界」、13室「アジアの祈り」)と、その他の展示室で注目作品が展示されています。
めずらしい、ちょっとマニアックな作品・資料を見ていただく貴重な機会となっておりますが、実は、今回焦点を当てた作品・資料の大部分は普段から東洋館に展示されているものです。
「マジック」という視点とツアーやイベント等をとおして、普段の東洋館をより楽しんでいただけましたら幸いです。

最後に宣伝を。
「マジカル・アジア」のガイドブックが刊行されています!

博物館でアジアの旅 マジカル・アジア
500円(税込)
ミュージアムショップで販売中


マジカルな資料の面白さを、読みやすいかたちにまとめた冊子です。
ぜひお手に取ってくださいませ。

 

カテゴリ:研究員のイチオシ特集・特別公開博物館でアジアの旅

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posted by 小野塚拓造(東洋室) at 2017年09月04日 (月)

 

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