本館 16室
2010年10月19日(火) ~ 2010年11月28日(日)
東京国立博物館は明治5年(1872)の創立・開館以来、展示品の拡充や調査研究などの目的で、さまざまな模写・模造品を制作・収集してきました。今回はその中から「平家納経」を特集します。
「平家納経」(原本・国宝、厳島神社所蔵)は、長寛2年(1164)、平清盛(1118~81)が厳島神社に奉納した一品経(いっぽんぎょう)(法華経 28品を1品ずつ1巻に仕立てた経巻)です。表紙・見返しのみならず本紙や紙背も、金泥や銀泥をふんだんに使って経意絵(きょういえ)や葦手(あしで)な どを描き、経文も金銀字や緑青(りょくしょう)、藍を併用して書写し、軸首や題箋の細工にいたるまで趣向を凝らしています。その豪華絢爛で贅(ぜい)をつ くした装飾経はほかに例がありません。
江戸時代・天保13年(1842)に発行された『厳島宝物図会』では、「平家納経」の装飾が紹介されていました。明治15年(1882)、内国絵画共進 会が開かれると、「平家納経」も東京で展示されます。その機会に「平家納経」は博物館で模写され、それが当館の「平家納経模本」第一号(A-6917)に なります。そのほか厳島神社が依頼し、益田鈍翁(ますだどんおう)(1848~1938)らの援助により制作された複製本「平家納経」(田中親美(たなか しんび)模、B-2406)は、原本の美しさをそのまま伝えています。模写・模造から、「平家納経」の優美な世界をご堪能ください。