平成館 考古展示室
2010年9月14日(火) ~ 2010年12月12日(日)
弥生時代には農耕社会の発達に伴って戦闘が発生し、狩猟具を転用した武器が生まれました。やがて殺傷力が増 した専用の金属製武器に対して木製などの防御用甲冑が造られたとみられます。古墳時代に出現する金属製甲冑には、中国・朝鮮半島から運ばれた舶載品と大陸 の高度な鉄器生産・加工技術の摂取によって日本列島で生産された国産品があります。
古墳時代前期には、若干の舶載品と朝鮮半島出土品と似た短甲が現われました。中期には日本列島独自の帯金式甲冑が成立し、畿内地方で集中的に量産されて広範囲に分布します。後期には大陸系の挂甲(小札甲)が普及しますが、衝角付冑は中期から引き続き生産されました。
一方、武器や武具にはしばしば過剰な装飾や戦闘に不利な形態をもつ例があります。これらは社会的・政治的に象徴的な存在で、発達した農耕社会を映し出す 文物といえるものです。古墳時代中期における金属製甲冑の整備は、倭五王の上表文に窺える倭王権の軍事的性格を背景に進められたと考えられます。古墳時代 の甲冑は古墳の出現と消滅にほぼ一致しており、戦闘方法の変遷や古墳文化および社会構造を反映する重要な資料といえます。