平成館 企画展示室
2010年11月2日(火) ~ 2010年11月28日(日)
東京国立博物館には、明治のはじめ、上代裂(じょうだいぎれ)の保存と当時の織物模様の研究のため、正倉院 から頒布された染織品が、ガラス挟みの状態で260点余り収蔵されております。その中には染物では描絵(かきえ)、上代三纈(さんけち)と呼ばれる纐纈 (こうけち)、﨟纈(ろうけち)、夾纈(きょうけち)、織物では平絹をはじめ、文様を織りだした綾(あや)、羅(ら)、多彩な色糸を用いた錦(にしき)、 さらに刺繍(ししゅう)といったさまざまな技法の染織品が含まれております。
今回はこの内から染物を中心に展示いたします。正倉院頒布裂は前述のごとくガラス挟みのため、大形の染織品はありませんが、なかには類裂から用途を推測 することができるものもあります。大仏開眼供養会(くようえ)で用いられた幡(ばん)や、当日の法要で行なわれた舞楽の装束(しょうぞく)、聖武天皇一周 忌斎会(さいえ)で飾られた道場幡の幡足といった使用時期のわかるものもあります。また、正倉院の幡で最大級の夾纈袷五坪幡(きょうけちあわせごつぼば ん)の坪裂(つぼぎれ)や幡足、天蓋垂飾(てんがいすいしょく)等々が含まれております。
さらに、大正時代末に正倉院の染織品を模写した作品も当館には収蔵されておりますので、現品と対比してこれらも併せて展示いたします。1200年以上も前に染められた斬新な文様と、高度な技術に培われた作品の数々をご高覧ください。