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絹糸と金箔の和様美―縫箔―

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    本館 9室
    2010年8月31日(火) ~ 2010年10月24日(日)

     縫箔(ぬいはく)とは、刺繍(ししゅう)と金銀の箔で模様を表わしたキモノ形の能装束のことです。主に、若い女性を主人公とする鬘能(かつらのう)において、長絹(ちょうけん)や舞衣(まいぎぬ)といった上衣の下に腰巻にして着用します。能装束の表着(うわぎ)には唐織(からおり)や金襴(きんらん)など織物が用いられることが多く、縫箔は脇役といったイメージがあります。ところが、唐織が普及していない安土桃山~江戸時代初期においては、縫箔はもっとも華やかで美しい衣装として、鬘能の表着に用いられていました。刺繍で埋め尽くすように模様を表わし、さらにその隙間に金箔を敷き詰めたゴージャスなデザインです。江戸時代になると、能の演目を思わせるような風景や景物が取り込まれ、団扇(うちわ)や扇面を散らしたデザインなど、キモノ全体がまるで一幅の絵を思わせるような物語性が加わるようになりました。叙情性あふれる風景模様や秋草模様からは、伝統的な中国の吉祥模様とは異なる和様美がうかがえます。撚 (よ)りのかかっていない絹糸をゆったりと渡し、絹の光沢を限りなく生かした和刺繍もまた、日本独特のものです。シルクの光沢と金箔の輝きが奏でる縫箔の美をご堪能ください。

主な出品作品

*所蔵の表記の無いものは、当館蔵品です。
重要文化財 縫箔 紅白段菊芦水鳥模様 金春座伝来 安土桃山時代・16世紀
重要文化財 縫箔 茶地百合御所車模様 金春座伝来 安土桃山時代・16世紀