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書の至宝-日本と中国

書の至宝-日本と中国 / 平成館 特別展示室   2006年1月11日(水) ~ 2006年2月19日(日)

  
定武蘭亭序(呉炳本)(部分) 王羲之筆 東京国立博物館蔵(上)

国宝 白氏詩巻(部分) 藤原行成筆 東京国立博物館蔵(下)

 “書聖”王羲之の双鉤填墨本や拓本などの中国の書、空海や小野道風をはじめ、三筆、三跡、古筆、唐様など日本の書の名品を一堂に集め、古代から清時代までの中国の書の歴史をたどるとともに、その影響を受けながら独自の世界を築いてきた日本の書の展開を紹介。両国の書の歴史と美を一望する画期的な展覧会です。

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開催概要
会  期 2006年1月11日(水)~2月19日(日)
会  場 東京国立博物館 平成館 (上野公園)
開館時間 9:30~17:00
※時間帯ごとの会場状況についてはこちら
休館日 月曜日
観覧料金 一般1400円(1200/1100円)、大学生1000円(900/800円)、高校生900円(800/700円)、中学生以下無料
( )内は前売り/20名以上の団体料金
障害者とその介護者一名は無料です。入館の際に障害者手帳などをご提示ください。
前売り券はJR東日本みどりの窓口、びゅうプラザ、チケットぴあなどの主要プレイガイド、および東京国立博物館 正門観覧券売場(開館日のみ)にて、2005年11月11日(金)から2006年1月10日(火)まで販売。
交  通 JR上野駅公園口・鶯谷駅より徒歩10分
東京メトロ銀座線・日比谷線 上野駅 、千代田線 根津駅、京成電鉄京成上野駅より徒歩15分
主  催 東京国立博物館、朝日新聞社、テレビ朝日、上海博物館
後 援 外務省、文化庁、中国大使館、神奈川県教育委員会、埼玉県教育委員会、千葉県教育委員会、台東区教育委員会
協賛 大日本印刷株式会社、松下電器産業株式会社
協  力 ニッセイ同和損害保険、全日空
お問い合わせ 03-5777-8600(ハローダイヤル)
展覧会ホームページ http://www.asahi.com/sho/
展覧会公式サイトは会期終了時をもって終了いたしました。
関連事業
記念講演会「中国書法の受容と和様の成立」
平成館 大講堂  2006年1月21日(土) 13:30~15:00 受付終了
講師:展示課長 島谷 弘幸
同時開催
現代書道二十人展50回記念「日本書壇の歩み―昭和から平成へ」
本館特別3室、平成館1階企画展示室 2006年1月11日(水)~2月19日(日)
50回記念となる 「現代書道二十人展」出品書家の中から、東京国立博物館所蔵の過去の出品者12人の作品と、現在同展で活躍する20人の新作を通して、日本における昭和から平成への書壇の歩みを紹介いたします。
巡回予定
中日書法珍品展
上海博物館 2006年3月13日(月)~4月23日(日)
主な出品作品  
日本の書
会場でごらんください
  国宝 風信帖 (ふうしんじょう) 空海筆
平安時代・9世紀 紙本墨書
京都・教王護国寺蔵


 空海(弘法大師)から最澄に宛てた手紙3通を1巻に仕立てたもの。第1通目の書き出しが「風信雲書」であることから、この名前で呼ばれています。空海が大同元年(806)に帰国してからしばらく経た弘仁3年~4年(812~813)のころの手紙と考えられ、一緒に入唐し日本の真言・天台の祖となった空海と最澄の交流を物語るものとして貴重です。三筆の1人として能書で名高い空海の遺品の中で、最も著名なものです。伝統的な王羲之書法や顔真卿の書法を手中にしたもので、豊潤で重厚、濶達自在と変化に富んだ多様な書法を展開しており、書道史・仏教史の上でも注目される遺品です。
白氏詩巻
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  国宝 白氏詩巻 (はくししかん) 藤原行成筆
平安時代・11世紀 彩箋墨書
東京国立博物館蔵
(展示期間 2006年1月11日~1月29日)


 平安時代の宮廷貴族は、教養として漢詩や和歌の素養、文字を巧みに書くことなどが求められていました。漢詩の中でも、とりわけ唐の詩人・白居易の詩集『白氏文集』が大いにもてはやされました。この「白氏詩巻」は、その白詩愛好を受けて美しい染紙の料紙に書写したもので、三跡の1 人として知られる藤原行成(ふじわらのこうぜい)47歳の自筆です。行成は当時盛行していた小野道風の書法の影響を受け、明るく瀟洒で優美な和様の書法を完成させました。
古今和歌集(元永本)
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  国宝 古今和歌集(元永本) (こきんわかしゅう げんえいぼん) 藤原定実筆
平安時代・12世紀 彩箋墨書
東京国立博物館蔵(三井高大氏寄贈)


 『古今和歌集』の仮名序および20 巻すべてを完存する現存最古の写本。上下2 帖の、紐でつづった綴葉装仕立(てっちょうそうじたて)になる冊子本で、原装のまま伝存してきました。上巻の末尾の奥書の年号にちなんで、元永本の名で呼ばれます。紫・赤・緑・黄・茶・白など様々な色の紙に、唐草・菱文様・亀甲・七宝などの型文様を刷り出した華麗な和製の唐紙を用いています。変化に富んだ書風や散らしの妙はその筆者の能書ぶりを十二分に発揮したものです。筆者は、藤原行成の曾孫・定実の筆と推定されます。
梅渓二大字
  重要文化財 梅渓二大字 (ばいけいにだいじ) 大燈国師筆
鎌倉時代・14世紀 紙本墨書
東京・五島美術館蔵


 大燈国師(だいとうこくし、宗峰妙超 しゅうほうみょうちょう)は鎌倉時代後期の臨済宗の高僧。大徳寺の開山として著名で、花園・後醍醐天皇はじめ多くの人々の帰依を受けました。彼の書は、中国宋時代の黄山谷(こうざんこく)などの影響を受けた雄渾で堂々とした筆致が特徴で、わが国の禅林墨跡の中で最も高い評価を得ています。この1 幅は一休宗純開山になる田辺の酬恩庵に伝来していたものを、前田利常が毎年100 石の寄進を約束して入手したものです。
摺下絵和歌巻
  摺下絵和歌巻 (すりしたえわかかん) 本阿弥光悦筆
安土桃山時代・17世紀 彩箋墨書
東京国立博物館蔵
(展示期間 2006年1月11日~1月29日)


 竹・梅・芍薬(しゃくやく)・蝶・蔦・藤などの版木(はんぎ)を金泥・銀泥で摺り出した料紙に、『古今和歌集』巻13に所収される和歌を書いたもの。美しい料紙に、流麗で躍動的な筆致で和歌が散らし書きされたもので、料紙と書と文学が織り成す美しさが魅力です。本阿弥光悦(ほんあみこうえつ)は刀剣の鑑定や研(と)ぎを家職とする富裕な町衆本阿弥家に生まれ、近衛信尹(このえのぶただ)、松花堂昭乗(しょうかどうしょうじょう)とともに“寛永の三筆”の1人として著名です。
中国の書
石鼓文(先鋒本)
  石鼓文(先鋒本) (せっこぶん せんぽうぼん)
原石:戦国時代・前5~4世紀 紙本墨拓
東京・三井記念美術館蔵
(展示期間 2006年1月11日~1月29日)


 天子が地方に狩りに出たときの情景を、四言を基本とした韻文に詠ったもの。太鼓に似た花崗岩質の10個の石に刻してあるので、この名があります。この石鼓文は、唐時代の韋応物(いおうぶつ)や韓愈(かんゆ)、あるいは宋時代の蘇軾(そしょく)らによって詩にも詠じられ、広く世に知られてきました。
明時代の大収蔵家である安国は、10種もの石鼓の旧拓本を入手し、自ら十鼓斎と称するほどでした。中でも、特に優れた北宋拓の3本を、軍兵の三陣になぞらえて先鋒本・中権本・後勁本と名づけ秘蔵していました。これら3種は、現在知られている石鼓の拓本の中で、最も著名なものです。
行書李白仙詩巻
  重要文化財 行書李白仙詩巻 (ぎょうしょりはくせんしかん) 蘇軾筆
北宋時代・元祐8年(1093) 紙本墨書
大阪市立美術館蔵
(展示期間 2006年1月11日~1月29日)


 日本に現存する唯一の蘇軾(蘇東坡)の真跡。蘇軾は宋の四大家としてその能書を称えられますが、それ以上に文学者として広く知られ、根強い詩文の愛好者が存在します。この作品は、元祐8年7月、蘇軾がべん京において道士の姚丹元(ようたんげん)から李白の作と称する詩二首を授かり、蘆雁文様(ろがんもんよう)を摺り出した料紙に行書で揮毫(きごう)したもの。宋時代には、本作に見られるように、見事な摺り出し文様の料紙を用いることが少なくありませんでした。北宋を滅ぼした金では、蘇軾の書が愛好されました。その状況を示すように、巻後には金人五家の題跋(だいばつ)が記され、金における蘇軾の書の影響ぶりを見ることができます。
鴨頭丸帖巻
  鴨頭丸帖 (おうとうがんじょう) 王献之筆
晋時代・4世紀 絹本墨書
上海博物館蔵


 王献之(おうけんし)は、王羲之の第7子。中国書法史では、父の王羲之を大王、王献之を小王と呼び、あわせて二王と総称しています。王献之の自筆の書(真跡)は、王羲之の場合と同様に現存しないものの、鴨頭丸帖は宋の宮中に旧蔵されていた由緒あるもので、原本の姿を正確に伝えると考えられる墨跡本です。王献之の代表作として広く知られ、元時代の虞集(ぐしゅう)をはじめ、歴代のそうそうたる名家の跋(ばつ:作品をほめ讃える書付)が書き込まれています。
苦筍帖巻
  苦筍帖 (くじゅんじょう) 懐素筆
唐時代・8世紀 絹本墨書
上海博物館蔵


 懐素(かいそ)は、唐時代に能書を謳(うた)われた僧。酒を愛し、興に乗ると絶叫して壁一面に書きまくったというように、奔放な草書に長じ、世に草聖と尊ばれました。また自然の変化に書の奥義を悟った等、数々のエピソードが残されています。「めずらしく佳い筍(たけのこ)と茶があるから、すぐにでも来られたし」というわずか2行の書簡ですが、現存する懐素の唯一の真跡と考えられています。本紙はもちろん、その前後に歴代の皇帝を始めとする収蔵印や跋文がかまびすしく、従来いかに重要視されてきたかが見て取れます。
双鉤填墨  
 書聖・王羲之の書は歴代の皇帝に愛好されましたが、その自筆の書は残っていないとされます。現在王羲之の書の本来の姿と最も近いといわれているのが、唐時代に宮中に設けられた専門の部署で「双鉤填墨」という技法で作成された精巧な複製です。これは、原跡の上を透き通った紙で覆い、文字の輪郭を写し取り、さらにその中を、原跡のにじみやカスレ、さらには虫食いにいたるまで細大漏らさず墨で填めていくという手法です。

現存する王羲之の双鉤填墨の作例はわずか8~9例にすぎません。なかでも、いずれも日本に伝わる「喪乱帖」(宮内庁三の丸尚蔵館蔵)、「孔侍中帖」(国宝、前田育徳会蔵)、「妹至帖」(個人蔵)はひときわ精度の高い作品として知られています。「喪乱帖」と「孔侍中帖」には、桓武天皇の「延歴(暦)勅定」印が押され、奈良時代に唐より舶載されたものであることが分かります。「妹至帖」も、「喪乱帖」、「孔侍中帖」と同様の紙質・技法を用いていることから、これも奈良時代に舶載された双鉤填墨の一つと考えられています。「東大寺献物帳」(聖武天皇が崩御されたのち、光明皇后がその遺愛の品々を東大寺に献納した際の目録)には、王羲之の書法20巻が記録されており、当時遣唐使らによって貴重な王羲之の双鉤填墨が日本にもたらされたと考えられます。

本展では、これら重要な双鉤填墨の作例3件が出品されます。
※「喪乱帖」(宮内庁三の丸尚蔵館蔵) は1月22日まで展示
※「妹至帖」(個人蔵)は1月24日から2月12日まで展示
※「孔侍中帖」(国宝、前田育徳会蔵)は2月7日から2月19日まで展示    
ライン
  書を楽しむために    
 書にはさまざまな要素があります。書かれた内容、筆跡の巧拙、あるいはその作品がもつ伝来の意義など、どれをとっても実に魅力的です。

ところが、崩してある文字が読めない、書かれている漢詩や文章が理解できない、といった理由から、書の作品を敬遠する人もいるようです。文字を読解すること、あるいは漢詩や文章を正しく解釈することだけが、書の理解や鑑賞ではありません。

書には、文字の造形、筆の運び、文字の配置などの空間構成や余白などの美しさがあります。さらに、書写するのに用いられた料紙や墨の色などの素材の魅力もあります。さらに、字形や文字を続けて書く連れん綿 めんの美しさ、にじみやかすれ、筆力の強さなどを見ていると、思わず惹きこまれていきます。さらに、書の特徴の1つとして、筆順を追うことによって、書いた人の美意識をも追体験できるのです。書のすべてがわからないと書を見ることができないのではなく、その要素の1つだけでも十二分に書を味わうことができます。

今日に伝えられてきた書は、信仰・文学・教育・生活などにより大切に伝えられたものです。1000年前の、あるいは紀元前の書が今日に残る奇跡を、いま目に出来る幸せを実感してみてはいかがでしょう。書は、時代を超えて鑑賞されます。個人個人の書は筆者が活躍していた時代と密接な関係があり、筆者が生きた時代の特徴や雰囲気の違いがはっきりと現れます。また、日本の書には、叙情性・軽妙洒脱・直感的で表現が先であるという特徴があり、中国の書には構築性・重厚で論理的な強さがあります。じっくり鑑賞すれば、この微妙な違いも判ります。

書には上手、下手という評価もありますが、何より品格が大切です。格調と個性が書の持つ魅力です。まさに「書は人なり」で、歴史に名をのこす人の書は、その人物を如実に物語っています。筆意をたどりながらそれぞれの作品をゆっくりと眺め、筆者の生き様、美意識を偲びながら鑑賞してください。