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日本美術のつくり方

  • 『浮世絵のつくり方 「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」のできあがり』の画像

    浮世絵のつくり方
    「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」のできあがり

    本館 特別2室
    2009年7月28日(火) ~ 2009年9月6日(日)

     「どうやってつくったのか」を知ることは、作品理解の重要な手がかりになります。伝統的な日本美術の製作工程や技術は、私たちの日常では目にする機会も少なく、作品を一見したところで想像すらつかないものが多くあります。  そこで、当館が所蔵する技術見本に加え、近年東京芸術大学の協力を得て製作した工程見本ならびに本展示にあわせて専門家に制作を依頼した工程見本を加え、作品ができるまでを、見てわかりやすく、読んで納得、触って実感できる展示で紹介します。

      日本美術を初めて見る方も、東京国立博物館によく来る方も、夏休みには、まずは「親と子のギャラリー」の会場に足を運んでみてください。その後、同じ分野の作品の展示室を見に行けば、今までよりも、もっと作品を身近に感じることができるはず。

      併せて本館20室の教育普及スペース みどりのライオンではハンズオン体験コーナー「北斎の冨士を作ろう!」にて、実際に版画を体験していただくことができます(会期中 11:00~16:00)。また、2009年8月22日(土)には、浮世絵版画制作実演「北斎の冨士ができるまで」(当日参加)と、ワークショップ「北斎の冨士ができるまで」(事前申込制)を行います。この機会にぜひ、版の世界の楽しさに触れてみてください。

主な出品作品

*所蔵の表記の無いものは、当館蔵品です。
日本画の描き方 ―裏から色を塗る方法 <制作工程模型 仏画(裏彩色) 一字金輪像> 平成20年度東京芸術大学学生ボランティア作 平成20年(2008)
十六羅漢像(迦諾迦伐蹉尊者) 三重・天然寺旧蔵 南北朝時代・14世紀
浮世絵版画のつくり方 <制作工程模型 浮世絵版画 冨嶽三十六景・神奈川沖浪裏> アダチ伝統木版画技術保存財団作 平成21年(2009)
関連事業
ハンズオン体験コーナー「北斎の冨士を作ろう!」
本館20室 2009年7月28日(火)~2009年9月6日(日) 11:00~16:00 当日参加
浮世絵版画制作実演「北斎の冨士ができるまで」
本館20室 2009年8月22日(土) 11:00~12:00 受付終了
ファミリーワークショップ「北斎の冨士ができるまで」
本館20室 2009年8月22日(土) 14:00~16:30 受付終了
「日本美術のつくり方」ギャラリートーク
本館特別2室 13:30~(30分程度)  当日参加
2009年8月12日(水) 全体ガイド×色絵陶磁について
2009年8月14日(金) 全体ガイド×一木造について
2009年8月19日(水) 全体ガイド×布目象嵌について
2009年8月21日(金) 全体ガイド×裏彩色について
2009年8月26日(水) 全体ガイド×布目象嵌について
2009年8月28日(金) 全体ガイド×一木造について
2009年9月  4日(金) 全体ガイド×裏彩色について
1.日本画のつくり方 ― 裏から色を塗る方法
 日本画が紙以外の素材にも描かれているのをご存知ですか?
絹に描く日本画では、表からだけでなく、裏側からも色をつけたり、金箔をはったりする技法があります。
それを、「裏彩色(うらざいしき)」と呼びます。
 
裏彩色の3つの特徴
その1 絹の裏から塗った色は、表から塗った色に比べてやわらかく見えます。
その2 裏に白色を塗ると、表の色がはっきりします。その部分が他のところにくらべて目立ちます。
その3 裏と表と別々の色を塗ると立体感や2色がまじった色あいを出すことができます。
 
制作工程模型 仏画(裏彩色)一字金輪像 表   制作工程模型 仏画(裏彩色)一字金輪像 裏  
表から見ると...。   裏から見ると...。
冠、アクセサリーの部分に、裏から金箔が貼ってあります。体と帯には白色が塗ってあります。
 
 
<制作工程模型 仏画(裏彩色)一字金輪像> 平成20年度東京芸術大学学生ボランティア作 平成20年(2008)
2.仏像のつくり方 ― 一本の木から彫る方法
 一木造(いちぼくづくり)は、頭、胸、おなか、立っている仏像の場合はその下の脚、かかとまで、体の中心部をひとつの木から造る技法です。木でできた仏像が重すぎたり乾燥してこわれたりしないよう、いろいろな工夫をしています。木の種類によって、重さや硬さ、木のにおいも違います。ハンズオン体験コーナーで体感してください。
 
一本の木から彫る方法
仏像彫刻(一木彫)聖観音菩薩立像 1   仏像彫刻(一木彫)聖観音菩薩立像 2   仏像彫刻(一木彫)聖観音菩薩立像 3   仏像彫刻(一木彫)聖観音菩薩立像 4
(1)材料は、カヤの木。墨で仏像の姿を描きます    (2)粗彫りをし、さらにあたり線を引きます   (3)おおよその形が出来たら、耳、目鼻、衣のひだなどの細部を彫りすすめます   (4)完成。この後、ビャクダンの色に似せるため、黄白色に塗ります
 
<制作工程模型 仏像彫刻(一木造)聖観音菩薩立像> 平成18年度東京芸術大学学生ボランティア作 平成18年(2006)(原品)京都・醍醐寺所蔵
3.色絵(いろえ)の皿のつくり方
 美しいもようが描かれたお皿やお茶碗。色鮮やかなもようは、どんなふうにつけられているのでしょうか。このコーナーでは、白く美しい肌に青、赤、緑などさまざまな色を使ってもようを描く色絵の皿のつくり方を紹介します。
 
色絵皿のつくり方
制作工程模型 色絵磁器 素焼き   制作工程模型 色絵磁器 墨を塗る   制作工程模型 色絵磁器 呉須を塗る
(1)「素焼き」したお皿   (2)白く残すところに墨を塗る    (3)青くするところに呉須を塗る(「下絵付け」)
 
制作工程模型 色絵磁器 墨弾き   制作工程模型 色絵磁器 本焼き   制作工程模型 色絵磁器 上絵付け
(4)もう一度「素焼き」すると墨の部分が燃えて白くぬける(「墨弾き」)   (5)釉薬をかけて「本焼き」すると、呉須で描いた絵が青くなる   (6)赤や緑の模様を描いて(「上絵付け」)もう一度焼いて、出来上がり
 
<制作工程模型 色絵磁器> 十二代今泉今右衛門作 昭和29年(1954)頃
4.刀の鐔(つば)のつくり方 ― 細かいもようを描く方法
 「象嵌(ぞうがん)」とは、木や金属にほかの素材のもようをはめ込むために考えられた方法です。象嵌をする素材には金属や木、動物の角など様々なものがあり、その方法もいくつかあります。
布目象嵌(ぬのめぞうがん)は、鉄などの金属に細かな溝を彫り金や銀をはめ込む技法です。
どうして布目と呼ぶのか、象嵌のための道具や材料、つくり方を紹介します。
 
月に桜花図鐔
刀のつば 月と桜のもよう
画像をクリックすると拡大図が見られます。
<月に桜花図鐔> 加納夏雄作 江戸~明治時代・19世紀 クインシー・A・ショー氏寄贈
5.浮世絵のつくり方
 絵を描く人、版木を彫る人、摺(す)る人たちの共同作業で、浮世絵はつくられます。どのような順番や方法でつくっているのかご覧ください。
 
つくり方
浮世絵版画 絵師   浮世絵版画 彫師   製作工程模型 浮世絵版画 冨嶽三十六景・神奈川沖浪裏 版木
(1)絵師(えし) 輪郭線だけの下絵を描き、色の指定をします。   (2)彫師(ほりし) 指定された色ごとに版木を彫ります。   (3)彫りあがった版木(はんぎ)
 
浮世絵版画 摺り師   製作工程模型 浮世絵版画 冨嶽三十六景・神奈川沖浪裏
(4)摺師(すりし) 何枚もの版を正確に摺り重ね、色鮮やかな浮世絵を完成させます。   (5)完成
 
<制作工程模型 浮世絵版画 冨嶽三十六景・神奈川沖浪裏> アダチ伝統木版画技術保存財団作 平成21年(2009)