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能面・能装束に見る能の表現 ―女性の風姿―

  • 『唐織 紅緑段御簾色紙短冊萩模様 江戸時代・18世紀』の画像

    唐織 紅緑段御簾色紙短冊萩模様 江戸時代・18世紀

    本館 9室
    2009年9月15日(火) ~ 2009年11月8日(日)

     能の多くは、中世に生きた人々の悲劇的な境遇の心の内奥を詩的に唄いあげています。人々の生活の中にある滑 稽味(こっけいみ)を芝居にした狂言のような生活感はなく、歌舞伎のような劇的な展開も見られません。能楽師は抑制された動きと謡の中に、演じる役の性格 や身分、歓喜や哀切、後悔といった感情を表わそうとします。大げさな身振りや表情を削ぎ落とした能の演技では、能面の持つ微妙な表現力が重視されていま す。

      中でも女面は、若い女性の役に用いる小面を基本形とし、毛髪の乱れや目の表情、しわなどによって年齢や性格、境遇などを繊細に作り分 けています。男性である能楽師では表現しきれない女性の表情を追求した結果といえるでしょう。一方、装束は、役柄によって厳密にきまっているわけではあり ません。たとえば、女性役の象徴とも言える唐織ですと、鳳凰(ほうおう)や御簾(みす)、色紙散らしといったような王朝風の模様は気品のある貴族女性に、 秋草模様のようにしっとりと落ち着いた模様は市井の女性にと、演じる役柄によって能楽師が選びます。いわば、能装束の模様は重要な演出のひとつといえるで しょう。

      能楽師の面、装束の選択によって女性の姿や性格は微妙に変わります。その奥深い表現に今一歩深く分け入ってみましょう。
主な出品作品

*所蔵の表記の無いものは、当館蔵品です。
唐織 紅緑段御簾色紙短冊萩模様 江戸時代・18世紀
舞衣 紫地紫陽花雲模様 江戸時代・18世紀