本館 16室
2008年1月2日(水) ~ 2008年2月17日(日)
文化財の調査は、博物館にとって欠かせない活動のひとつです。草創期の東京国立博物館にとっても古社寺や華族の所蔵品調査は、陳列品収集のためにも重要な事業でした。
明治4年(1871)、「古器旧物保存方(こききゅうぶつほぞんかた)」の布告により近畿地方を中心とした社寺などに古器旧物(文化財)の目録を提出させ、翌明治5年(1872)、日本で最初の全国的規模での文化財調査が実施されました。この調査は、その年の干支から「壬申(じんしん)検査」と呼ばれています。同年東京・湯島聖堂で開催の文部省博覧会の出品に備えるもので、廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)の波から文化財を守る目的もありました。調査には、博物館の町田久成(まちだひさなり)・蜷川式胤(にながわのりたね)、文部省の内田正雄(うちだまさお)のほか、油絵画家の高橋由一(たかはしゆいち)、写真師の横山松三郎(よこやままつさぶろう)が参加し、伊勢、名古屋、京都の各社寺や華族の宝物検査に続いて、東大寺正倉院の開封が天保年間(1830~43)以来はじめて行なわれ ました。
今回の特集では、壬申検査の過程をうかがうことのできる、重要文化財の壬申検査宝物図集、関係写真をはじめ、当館に伝来する当時の資料を紹介し、初期文化財調査の様子を紹介します。また、明治22年(1889)当時の正倉院宝物の修理の状況を描いた、正倉院宝物修理実況図などの展示により、文化財の保護 について考えてみます。