平成館 特別展示室第4室
2005年7月20日(水) ~ 2005年9月11日(日)
日本美術史上の名宝を模写・模造で紹介しながら、日本美術における「模写・模造」の意味を探ります
執金剛神立像(部分) 東京国立博物館蔵
平成館 特別展示室第4室
2005年7月20日(水) ~ 2005年9月11日(日)
日本美術史上の名宝を模写・模造で紹介しながら、日本美術における「模写・模造」の意味を探ります
■ 開催概要 |
会 期 | 2005年7月20日(水)~9月11日(日) | ||||||||
会 場 | 東京国立博物館 (上野公園) 平成館 特別展示室第4室 | ||||||||
開館時間 | 9:30~17:00 毎週金曜日は20:00まで、土・日曜は18:00まで開館。 (入館は閉館の30分前まで) |
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休館日 | 月曜日 (ただし2005年8月15日(月)は開館) | ||||||||
観覧料金 | 一般420(210)円 、大学生130(70)円
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交 通 | JR上野駅公園口・鶯谷駅より徒歩10分 東京メトロ銀座線・日比谷線 上野駅 、千代田線 根津駅、京成電鉄京成上野駅より徒歩15分 |
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主 催 | 東京国立博物館 | ||||||||
お問い合わせ | 03-5777-8600 (ハローダイヤル) | ||||||||
■ 関連事業 |
記念講演会 | |
記念講演会「日本美術を伝える」 平成館 大講堂 2005年8月13日(土) 13:30~15:00 講師:日本美術院評議員・東京芸術大学教授 田渕俊夫 氏 |
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■ 同時開催 |
親と子のギャラリー「うつす・まなぶ・つたえる」 会期:2005年7月20日(水)~9月11日(日) 会場:平成館 特別展示室第3室 観覧料:平常展料金でご覧いただけます。 |
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特別展「遣唐使と唐の美術」 会期:2005年7月20日(水)~9月11日(日) 会場:平成館 特別展示室第1室・特別展示室第2室 観覧料:特別展「遣唐使と唐の美術」の観覧券が必要です |
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■ 各章のテーマと主な作品 |
I. 古典にまなぶ |
古典を模写して、その造形精神を忠実に学び取ることは、新たな創造を生み出す原点です。ここでは近世と近代の巨匠たちによる模写作品をご覧いただきます。 |
I-1. 近世 | |||
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夏珪・雪舟・狩野派
狩野常信の「流書手鑑」にある「四季山水図」は、中国南宋の夏珪の作品を雪舟が模写したものを、さらに常信が模写したものです。日本水墨画の祖・雪舟は、中国の山水画を模写によって研究し独創的な水墨山水画法を完成させました。そして、江戸画壇を指導した狩野派の絵師は、漢画の規範として雪舟を学んだのです。 流書手鑑狩野常信 江戸時代・17~18世紀 東京国立博物館蔵 原品:雪舟 室町時代 |
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臨書と双鉤填墨 模写は、書においてもっとも重要な学習方法です。手本とする名筆、すなわち原本の上に紙を載せ、文字の輪郭をまず写し取り、その内側に墨を埋めていく模写の方法を双鉤填墨(そうこうてんぼく)といい、原本を傍において、それを見ながら写し取る方法を臨書(りんしょ)といいます。 市河米庵の二つの「天馬賦」は、米庵が私淑する米元章(べいげんしょう)の拓本を学んだものです。図版上は、十代において字形を学ぶことに主眼をおいた双鉤填墨による模写。図版下は、最晩年における遺墨で部分的には米庵自身の作品的な要素がみえる臨書。幕末の三筆の一人、江戸時代を代表する能書であった米庵が、生涯にわたって模写による学書につとめたことを示す好資料といえます。 上:天馬賦 市河米庵 江戸時代・寛永7年(1795) 東京国立博物館蔵 原品:米元章 北宋時代・12世紀 下:臨天馬賦 市河米庵 江戸時代・安政5年(1858) 東京国立博物館蔵 原品:米元章 北宋時代・12世紀 |
I-2. 近代 |
明治22年(1889)、古い伝統をふまえながら新しい日本美術の創生を目指していた岡倉天心が、帝国博物館(のちの東京国立博物館)の美術部長に就任し、同時に、東京美術学校の校長に就任しました。翌年、天心は帝国博物館美術部長として、東京美術学校に木彫技法による仏像の模造制作を委嘱しました。天心はこれら模写・模造作品を、美術教育を目的として博物館の展示に活用しました。その後も国立博物館の事業として継続された模写・模造は、近代日本美術にさらなる創造をもたらし、また近代日本の美術教育を支えた点で、大きな歴史的意義が認められます。 |
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竹内久一の執金剛神像 天平彫刻の最高傑作とされる東大寺法華堂の塑造原像を、竹内久一が木彫に再現した作品。迫真的な表現と華麗な彩色がそのままに写し取られています。 執金剛神立像 竹内久一 明治24年(1891) 東京国立博物館蔵 原品:奈良時代 東大寺蔵 |
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田中親美の本願寺本三十六人家集 平安時代料紙装飾の精華とされる本願寺本・三十六人家集を、田中親美が当時の技法を忠実に再現して複製したもの。田中親美は「源氏物語絵巻」や「平家納経」なども模写複製しました。 本願寺本三十六人家集 田中親美 明治40年(1907) 東京国立博物館蔵 原品:平安~江戸時代 西本願寺蔵 |
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横山大観の牧谿と雪舟 「四季山水図」は、横山大観が日本の画聖雪舟に学んだ作品。大観は雪舟の「四季山水図」を模写研究し、その成果を近代山水画の傑作「瀟湘八景」に結実させました。 「観音猿鶴図」は、中国水墨画の最高峰とされた南宋の画僧牧谿の代表作を、横山大観が模写した作品。大観は牧谿から中国水墨画の技法を学び、近代日本水墨画を代表する「生々流転」を制作しました。 四季山水図 横山大観 明治30年(1897) 東京国立博物館蔵 原品:雪舟 室町時代 ブリヂストン美術館蔵 |
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観音猿鶴図(猿図) 横山大観 明治28年(1895) 東京国立博物館蔵
原品:牧谿 南宋時代 大徳寺蔵 |
II. 正倉院にまなぶ |
奈良・正倉院に伝わる工芸品の模造をご覧いただきます。多くの工芸家たちが正倉院宝物の模造を通して、その高い芸術性と高度な技術を学んできました。それは単なる形の模倣ではなく、技術の伝承をも意味しています。正倉院模造は「研究による復元模造」として、学術的価値もきわめて高く、後世の日本工芸の発展に多大な影響を及ぼしています。 |
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螺鈿紫檀五弦琵琶 明治時代・19世紀 東京国立博物館蔵 原品:奈良時代 宮内庁正倉院事務所蔵 |
III. 文化財をつたえる |
日本美術の素材は環境の変化を受けやすい脆弱なものが大半を占めており、最善の修理や保存の方策をとっても時間の経過とともに退色や劣化が進んでしまうという宿命を負っています。しかし私たちは、模写・模造によって原品の価値を認識することができるとともに、そのすばらしさを後世に伝えることができます。一方、模写・模造を行う場合、その文化財について、精細な調査・分析が行われています。この過程で私たちは、材質・構造・技法・色彩などに関するさまざまな情報を得ることができます。学術的にも貴重なこれらの情報をもとに行われる復元模造の制作は、単にその形を写すのではなく、伝統的な技術を後世に伝承することにもつながっています。模写・模造は、文化財を後世に伝えることの重要性を改めて教えてくれています。 |
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法隆寺金堂壁画 模写 明治初期、フェノロサや岡倉天心らによって日本美術の精髄としての価値を見出された奈良・法隆寺の金堂壁画。昭和15年(1940)から、法隆寺昭和大修理の一環として、壁画の模写事業が開始されました。しかし、昭和24年1月26日未明の金堂火災で壁画の大半が焼失してしまったのです。このときに制作された模写は、在りし日の壁画の面影を今に伝える唯一の貴重な資料となっています。 法隆寺金堂壁画(10号)荒井寛方ほか 昭和時代・20世紀 法隆寺蔵 原品:飛鳥時代 法隆寺蔵 |
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高松塚古墳壁画 模写 昭和47年(1972)3月、奈良・明日香村の高松塚古墳石室内で、四方に四神を配し、大陸的な女官を描いた壁画が発見されました。古墳は同年に特別史跡に、壁画は昭和49年に国宝に指定されました。すでに劣化している壁画下地の漆喰が崩れる可能性がある上、カビなどの雑菌が持ち込まれれば直ちに画面は損なわれるおそれがあります。そこで文化庁による保存事業の一環として、発見の約1年後、約10ヶ月をかけて壁画の模写が行われました。制作にあったのは、前田青邨、平山郁夫など日本画家の重鎮たちでした。 高松塚古墳石室壁画(西壁) 前田青邨・平山郁夫ほか 昭和時代・20世紀 奈良文化財研究所飛鳥資料館蔵 原品:飛鳥時代 |