本館 特別1室
2007年6月19日(火) ~ 2007年8月19日(日)
我が国における書の和風化は、小野道風(おののとうふう)や藤原行成(ふじわらのこうぜい)などの「能書(のうしょ)」の登場により「和様(わよう)」の書が成立して展開します。この「能書」たちは、貴族社会の構成員であり、朝廷に仕えた行政の実務者でし た。その社会の頂点が天皇です。天皇は貴族社会の権威として文化の担い手でもあり、歴代からは聖武、嵯峨、伏見、後陽成(ごようぜい)などの傑出した「能書」が登場します。特に鎌倉時代以降、独特の風格を持つ天皇の書は「宸翰(しんかん)」と呼ばれ珍重されます。重厚で優美なその書は道風・行成ら和様の書風を規範とした表現に特徴がみられますが、宸翰といっても一様ではなく、他の公家と同様に伝統的な書風を継承しつつ自らの個性を加えるなど、書流の回顧と復帰が繰り返されて様々な表現が展開されていきました。
室町時代に入ると後小松(ごこまつ)天皇の柔軟さと上品さが特徴的な「後小松院流」、後円融(ごえんゆう)から後土御門(ごつちみかど)天皇までの力強 い書風の「勅筆(ちょくひつ)流」、室町時代後期から江戸時代にかけての細さや太さ・強弱の変化を巧みにした「後柏原院(ごかしわばらいん)流」などが知られています。
この特集では館蔵品のうち、奈良から江戸時代にかけての歴代の中でも能書の聞こえ高い天皇の自筆作品に伝承作品も含めて展示し、書流の継承と展開を作品より跡付けてご覧いただくものです。