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天台宗開宗1200年記念 特別展 最澄と天台の国宝

天台宗開宗1200年記念 特別展 最澄と天台の国宝 / 平成館 特別展示室   2006年3月28日(火) ~ 2006年5月7日(日)

  
重文 紺紙金銀交書法華経(部分)
滋賀・延暦寺蔵

 天台宗開宗1200年を記念して、比叡山延暦寺ほか全国の天台宗関係の寺院に伝わる文化財を一堂に展観します。開祖最澄と天台の祖師の肖像や筆跡をはじめ、「法華一乗」の教えを中心に、密教、浄土教、禅、神道の理解までを含む総合的な教学が育んだ多彩な仏教美術をご覧いただきます。

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開催概要
会  期 2006年3月28日(火)~5月7日(日)
会  場 東京国立博物館 平成館 (上野公園)
開館時間 9:30~17:00 (毎週金曜日は20:00まで、土日祝休日は18:00まで開館。入館は閉館の30分前まで)
休館日 月曜日 (2006年5月1日(月)は開館)
観覧料金 一般1300円(1100円/1000円)、大学生・高校生900円(700円/600円)、小学生・中学生400円(300円/200円)
( )内は前売り/20名以上の団体料金
障害者とその介護者一名は無料です。入館の際に障害者手帳などをご提示ください。
前売り券は、首都圏の主要プレイガイド、および東京国立博物館 正門観覧券売場(開館日のみ)にて3月27日(月)まで発売。
交  通 JR上野駅公園口・鶯谷駅より徒歩10分
東京メトロ銀座線・日比谷線 上野駅 、千代田線 根津駅、京成電鉄京成上野駅より徒歩15分
主  催 東京国立博物館、天台宗、比叡山延暦寺、天台宗京都教区、読売新聞東京本社
後 援 文化庁
協 賛 大成建設、サントリー、ダイワボウ情報システム、図書印刷、ニッセイ同和損害保険、日本香堂
協  力 天台宗東京教区、JR東日本
お問い合わせ 03-5777-8600(ハローダイヤル)
展覧会ホームページ http://event.yomiuri.co.jp/2006/tendai/
関連事業
  記念講演会
特別講話「回峰行と天台のこころ」
平成館 大講堂 2006年4月8日(土) 13:30~15:00 受付終了
講師:比叡山飯室谷不動堂大阿闍梨 酒井 雄さい 師
記念講演会「近江歴史塾・司馬遼太郎が見た比叡山の魅力」
平成館 大講堂 2006年4月13日(木) 13:30~15:00 受付終了
平成館 大講堂 2006年4月28日(金) 18:00~19:30   受付終了
講師:徳法院住職 福田徳郎 師
関連イベント
「天台声明公演」
会期:2006年4月7日(金) 18:30~19:30  受付終了
会場:本館前 (雨天時は屋内)
出演:天台宗東京教区
聴講無料 (ただし、当日の入館料は必要)
同時期開催
聖徳太子御忌日記念 特別公開「国宝・天寿国繍帳と聖徳太子像」
会期:2006年3月14日(火)~4月9日(日)
会場:法隆寺宝物館第6室
観覧料金:平常展料金でご覧いただけます。
担当研究員による鑑賞のポイント 1~3
鑑賞のポイント1  天台の密教
天台大師坐像
天台大師坐像
平安時代・12世紀 愛知・瀧山寺蔵
国宝 不動明王像(黄不動)
国宝 不動明王像(黄不動)
平安時代・12世紀 京都・曼殊院蔵
[展示期間:2006年4月18日(火)~5月7日(日)]
   天台宗の中心は、言うまでもなく、永遠なる釈迦を称えた『法華経』です。その天台宗が、法華経美術だけにとどまらず、きわめて多彩な密教美術の世界を生み出したのは何故でしょうか。それは、天台宗が開かれた平安時代の仏教が、国家や天皇の安泰、病の治癒、安産、政敵への呪詛など、さまざまな現世利益をかなえてくれる優れた手段として、期待されていたからなのです。

こうした期待に最初に力強く答えたのは真言宗でした。真言密教はすでに空海の時点で、整備された密教の儀式や美術を、中国からもたらしていました。これに対して、最澄が唐から持ち帰った品々は、当然ながら法華経に関するものが中心でした。従って天台宗では、人々の祈願に応えて、宗派の土台を築くために、強力に密教化を進める必要がありました。

この使命を見事に果たしたのが、最澄に連なる円仁、円珍らの弟子たちで、彼らは唐に渡って経典・仏具類の取得につとめ、最澄の欠を補って余りある密教関連の経典や美術を比叡山にもたらしました。それらの中には、真言密教よりも古い時代の密教も含まれるなど、まことに多様なものでした。そうした天台の密教(略して台密と呼ぶ)の美術に見られる特徴のひとつに、柔軟性という点があげられるでしょう。通常、密教の仏像や仏画は、経典などに記された約束事に厳密に則って制作されます。しかし、たとえば不動明王画像の中でも有名な「黄不動」は、円珍の修行中に出現した、経典には登場しないオリジナルな像です。また、天台宗寺院によく見られる聖観音・毘沙門天・不動明王の三尊形式は、円仁の信仰から成立した独自なものです。

すなわち、伝統的な規則に基づく正統な密教の造形と、高僧の信仰体験等から生まれた独創的な造形とが、見事に融和している点に台密の美術の特色があると言えます。そしてこうした密教美術は、法華経美術や浄土教美術等とならんで、天台美術の大きな柱となっているのです。
(東京国立博物館 列品課 行徳真一郎)

鑑賞のポイント2 装飾経の魅力
重要文化財 紺紙金銀交書法華経(巻第一 見返し)(部分)
重要文化財 紺紙金銀交書法華経(巻第一 見返し)(部分)
平安時代・11世紀 滋賀・延暦寺蔵
[展示期間 巻一:2006年3月28日(火)~4月16日(日)、巻三:2006年4月18日(火)~5月7日(日)]
法華経 開結共(巻第一) (部分)
国宝 法華経 開結共(巻第一) (部分)
平安時代・11世紀 東京・浅草寺蔵
[巻替:2006年4月17日(月)]
国宝 一字蓮台法華経(巻第三) (部分)
国宝 一字蓮台法華経(巻第三) (部分)
 平安時代・11世紀 福島・龍興寺蔵
[展示期間:2006年3月28日(火)~4月16日(日)]
   表紙や見返し、本紙や写経の文字、さらに軸・紐・題箋(だいせん)などに装飾をほどこした写経を装飾経とよびます。奈良時代の遺品も確認されており、早い時期から作られていました。

平安時代に入ると、いっそう華麗な装飾経が見られるようになりましたが、これは最澄が開創した延暦寺の日本天台宗が、『法華経』を根本経典とし、宮廷貴族に『法華経』信仰が広まったことに起因しています。『法華経』はそれを持って、読むだけで功徳がある、と考えられていました。仏の加護を得たいという人々は、『法華経』に説かれる写経成仏(「法師品」)や女人成仏(「提婆品」)の利益を信じ、こぞって経典の読誦や写経に励み、それが次第に写経供養へと繋がっていきました。さらに末法思想や浄土思想が流行するようになり、人々は末法の危機感と恐怖から、現世の極楽を願い、後世の成仏を頼んで、宇治の平等院鳳凰堂などの阿弥陀堂が次々に建立されました。

本展覧会に出品される「法華経 開結共」(浅草寺蔵)、「一字蓮台法華経」(龍興寺蔵)、「紺紙銀字法華経」「紺紙金銀交書法華経」(以上延暦寺蔵)などに見られる紫や紺の料紙、金字や銀字はいずれも経典を荘厳する意図によるもので、極楽浄土が瑠璃地で覆われており、七宝で荘厳されていたと説かれることに基づいています。宮廷貴族によるひたむきな気持ちを反映して、美の限りを尽くした装飾経が誕生していったのでした。

装飾経は、当時の人びとの信仰と美の融合のひとつの到達であり、華麗に装飾された工芸、見返しや下絵に見られる絵画、美しく書写された筆跡など当時の人びとの美意識を結集したものです。極楽浄土への篤い思いと宮廷貴族の美意識の融合の果てに出来あがった装飾経を、じっくりご鑑賞ください。
(東京国立博物館 展示課長 島谷弘幸)

鑑賞のポイント3  浄土信仰と六道絵
国宝  六道絵 阿鼻地獄(部分)
国宝  六道絵 阿鼻地獄(部分)
全15幅のうち
鎌倉時代・13世紀 滋賀・聖衆来迎寺蔵
[展示期間:2006年3月28日(火)~4月16日(日)]
   阿弥陀如来のいる西方浄土(さいほうじょうど)への往生の願いを、念仏によって実現しようとするのが浄土教です。天台浄土教は、円仁が中国五台山からもたらした法照流の五会念仏(ごえねんぶつ)が「山の念仏」として親しまれ、その道場としての常行堂(じょうぎょうどう 阿弥陀堂)が各地に建てられて普及しました。やがて源信が『往生要集』を著して詳しい理論と実践方法を集大成し、空也や千観が山を下りて人々に念仏を勧め、また末法(まっぽう)到来(1057年)がこれに拍車をかけたのでした。

こうした浄土信仰を背景に、阿弥陀如来が聖衆(しょうじゅ)とともに臨終者を迎えに極楽からやってくる様子を視覚化した来迎図が数多く制作されました。一方、極楽往生できなかったものが堕ちる、地獄・餓鬼・畜生・阿修羅・人・天の六道の苦しみを描く六道絵は、念仏修行を勧める反面教師として用いられました。

なかでも注目すべきは、滋賀・聖衆来迎寺の国宝「六道絵」でしょう。かつて比叡山に伝来したもので、『往生要集』をおもなテクストとして描かれた鎌倉時代の大作です。全15幅のうち4幅にもわたる地獄道は、その悲惨な情景を具体的かつ克明に描写していて見るものの眼を奪います。全体を見わたすと、水墨画をこなした宋元画の影響の顕著な幅と、伝統的なやまと絵風の幅とが混在しますが、寒色系を主調とする、一種暗さを帯びた色調が全幅の統一感を保っています。どの幅も的確な描写で、画面を破綻なく構成しており、当時第1級の画家の手になるものと思われます。高位の貴族の依頼によるものであるに違いないでしょう。今回の展覧会では、前期3週間に全15幅を1度に展示します。全幅を一望する千歳一遇の機会なのでお見逃しなく。
(東京国立博物館 上席研究員 松原茂)
   
 
国宝 六道絵 黒縄地獄
国宝 六道絵
黒縄地獄
  国宝 六道絵 等活地獄
国宝 六道絵
等活地獄
  国宝 六道絵 衆合地獄
国宝 六道絵
衆合地獄
   
全15幅のうち 鎌倉時代・13世紀 滋賀・聖衆来迎寺蔵
[展示期間:2006年3月28日(火)~4月16日(日)]
主な出品作品
国宝 天台法華宗年分縁起
  国宝 天台法華宗年分縁起 (てんだいほっけしゅうねんぶんえんぎ)
伝教大師筆
平安時代・9世紀
滋賀・延暦寺蔵
[展示期間:2006年3月28日(火)~4月16日(日)]


 延暦25年(806)から弘仁9年(818)にかけての文書6通を、最澄が自ら書写したもの。天台法華宗に正式な僧侶である年分度者(ねんぶんどしゃ)2人を認めてもらうよう上表した文書、それを許可した太政官符(だじょうかんぷ)、年分度者の歴名(れきめい)、比叡山に戒壇(かいだん)設立を申請した文書、加えて天台法華宗の学生(がくしょう)が守るべき項目を6か条にまとめたものが収められており、日本天台宗開創までの経過を知ることができます。最澄の筆跡を知るとともに天台宗の歴史を物語る極めて重要な遺品です。
重要文化財 聖観音菩薩立像(部分)
撮影:金井杜道
 
重要文化財 聖観音菩薩立像
撮影:金井杜道
  重要文化財 聖観音菩薩立像 (しょうかんのんぼさつりゅうぞう)
平安時代・12世紀
滋賀・延暦寺蔵


 比叡山の奥深くに位置する聖地「横川」(よかわ)の中心となるお堂の本尊。信長の焼き討ちや落雷による火災で中堂は消失しましたが(現在の横川中堂は1971年に再建)、本尊は奇跡的に救い出されました。蓮華を片手に少し腰をくねった姿は美しく、表情は慈愛に満ちています。平安後期の彫刻の名品のひとつとして知られています。
薬師如来坐像
  重要文化財 薬師如来及両脇侍立像 (やくしにょらい および りょうきょうじりゅうぞう)
平安時代・10世紀(中尊)、12世紀(脇侍)
東京・寛永寺蔵


 延暦寺の根本中堂(こんぽんちゅうどう)を模して元禄11年(1698)に建立された、寛永寺根本中堂の秘仏本尊像。中尊は滋賀の石津寺(いしづでら)から迎えられました。肩が角張って 輪郭線が直線的な体部と、それに対応するように四角い頭部はたいへん個性的です。すこし鄙(ひな)びた表現にみえますが、それがかえって最澄自刻という伝承の真実味を増しているようです。台座の蓮肉を含め一材から彫出する構造、鎬(しのぎ)のある襞(ひだ)と丸みのある襞を交える翻波式衣文(ほんぱしきえもん)と呼ばれる表現は、平安時代前期の特徴。しかし、圧倒的な重量感が見られず、肉身や衣文に均整が見られることから、10世紀になってから造られたと考えられています。脇侍の日光・月光菩薩像は、慈覚大師創建という山形の立石寺(りっしゃくじ)から、中尊と同時期に移されたもの。
薬師如来坐像
  重要文化財 薬師如来坐像 (やくしにょらいざぞう)
平安時代・正暦4年(993)
滋賀・善水寺蔵


 桓武天皇の病がお寺の湧き水により平癒したことにその名が由来する滋賀・善水寺。そのご本尊「薬師如来坐像」は秘仏で、普段は厨子の中に安置されています。

寺外での公開は初めて。
国宝 金銅宝相華唐草文経箱
  国宝 金銅宝相華唐草文経箱 (こんどうほうそうげからくさもんきょうばこ)
平安時代・長元4年(1031)
滋賀・延暦寺蔵


 長元4年(1031)、叡山の僧覚超は円仁がかつて書写した如法経を銅筒に納めなおし、横川の如法堂に埋納しました。その際、藤原道長の娘、上東門院彰子(じょうとうもんいんしょうし)もこれに結縁(けちえん)して自ら書写した法華経を埋納しています。この経箱はその彰子書写の法華経を容れていたもの。銅製鍛造で、隅丸長方形をした箱です。全面に宝相華唐草文(ほうそうげからくさもん)が蹴彫(けりぼ)りされ、全体に金メッキ、間地や床脚の格狭間には銀メッキを施した美麗な金銀の色彩対比が見事です。印籠蓋造(いんろうふたづく)りの蓋と身を簡単には開けられないように指金(さしがね)で留める仕様は、経巻が長く保護されることを願った、一条天皇中宮の上東門院の信仰の深さを表しているかのようです。平安時代の金工品を代表する優品の1つ。