本館 15室
2017年10月3日(火) ~ 2017年11月26日(日)
『稿本日本帝国美術略史』は、明治34年(1901)に日本で初めて編纂された公式の美術史です。
博物館では、明治20年代から文化財の調査と並行して美術史の編纂が試みられていましたが、費用等の事情から完成には至らずにいました。そのような中、明治33年(1900)のパリ万国博覧会に参加することになった日本は、日本美術の紹介に力を入れる方針をとりました。農商務省から委嘱を受けて、明治30年(1897)頃から帝国博物館(東京国立博物館の前身)では岡倉天心が中心となって美術史編纂を本格化し、パリ万博の年にフランス語で記された日本美術史『Histoire de l'art du Japon』が刊行されたのです。これは多数の図版を用いた豪華な大型本で、主に国内外の要人、学者に献上・配布されました。そしてパリ万博の翌年、フランス語に訳す前の原稿を元に農商務省から『稿本日本帝国美術略史』が刊行されました。本書は明治41年(1908)に建築の部を増補し、昭和13年に改訂版である『日本美術略史』が刊行されるまで日本美術史の概説書として永く版を重ねました。
この展示では東京国立博物館に残る『稿本日本帝国美術略史』の編纂から刊行に関わる記録や写真を通して、美術博物館として歩み始めた時期の博物館の活動をご紹介します。