平成館 企画展示室
2017年7月11日(火) ~ 2017年9月10日(日)
野毛大塚(のげおおつか)古墳は、東京都世田谷区の閑静な住宅街にあります。この古墳は、5世紀に築造された帆立貝の形をした古墳です。全長は82mもあり、東京都の古墳の中でも、有数の規模を誇ります。古墳の頂上には四つの埋葬施設があり、それぞれ第1~4主体部と呼ばれます。今から120年前の明治30年(1897)に、第2主体部である箱形石棺(はこがたせっかん)から、滑石製模造品(かっせきせいもぞうひん)や鉄製武器、装身具などが発見されました。滑石で作られた導水形(どうすいがた)の施設を再現した槽(そう)は、水を介した祭祀に関わるもので他に例がありません。また、下駄、坩(かん)、皿も珍しい例です。他にも、生産用具である斧や鎌を模したものや、刀子形(とうすがた)は東日本で最大数の232点以上が見つかりました。これら第2主体部出土品の大半は当館で所蔵しています。
このほか第1、3、4主体部出土品は、平成元~4年(1989~1992)に発掘を行った世田谷区教育委員会が所蔵しています。昨年(2016)、この世田谷区所蔵品が重要文化財に指定されました。そして今年(2017)、第2主体部で発見された当館所蔵品が、東日本における古墳副葬品をみるうえで高い学術的価値をもつとして、新たに重要文化財に指定されることになりました。
本特集では、第2主体部から発見された当館所蔵品の全貌がわかるよう展示いたします。これらの作品を通じ、古墳時代の祭祀から見えてくる人々の願いを感じていただければ幸いです。