平成館 企画展示室
2016年7月26日(火) ~ 2016年9月4日(日)
清朝末期、欧米や日本で中国の美術や考古に対する関心が高まりを見せるなか、調査・記録の有効な手段として、19世紀前半にヨーロッパで誕生し、当時日本では未だ広く普及していなかった写真技術を自ら習得し、清国各地を踏査した研究者がいました。
明治39~40年(光緒32~33年・1906~07)、東京帝国大学工科大学(現・東京大学)の関野貞(せきのただし、1867~1935)と塚本靖(つかもとやすし、1869~1937)は、東京帝室博物館(現・東京国立博物館)の嘱託であった平子尚(ひらこひさし、1877~1911)と共に、古(いにしえ)に都が置かれた河南省の洛陽や陝西省の西安を中心に様々な史跡や文物を調査し、写真撮影を行いました。さらに明治40~41年には関野貞が山東省一帯を、明治41年には塚本靖が河北・山西・河南・山東省を踏査しました。
写された史跡や風景のなかには、後年大きく姿を変えたものや、すでに失われたものもあります。100年の歳月を経た今、それらの写真は清朝の情景をまざまざと今に伝えてくれるとともに、建築、考古、金石、美術などの貴重な研究資料でもあります。
この特集では関野貞と塚本靖が清朝末期に行なった3度にわたる中国踏査に焦点をあて、踏査で撮影した写真資料の一部をご紹介いたします。