本館 特別1室・特別2室
2015年11月3日(火・祝) ~ 2015年12月13日(日)
時宗(じしゅう/時衆)の祖・一遍(いっぺん/1239~1289)は、全国さまざまな社寺や霊場を巡礼し、賦算(ふさん/念仏札配り)や踊り念仏をとおして布教を行なった念仏聖(ひじり)です。伊予国(愛媛県)の武士・河野氏の出身でしたが、承久の乱で一家は一時没落。一遍は13歳で出家し、51歳で亡くなるまで、浄土教学をもとに独自の念仏修行を実践しました。
一遍の十回忌にあたる正安元年(1299)に制作された国宝「一遍聖絵」は、その生涯を訪れた聖地の壮麗な風景とともに伝える伝記絵巻です。そのなかには、三国伝来の霊験本尊で知られる信濃善光寺や極楽浄土の東門と呼ばれた四天王寺など、日本仏教の礎となった古寺や、神仏の浄土として名高い熊野や護国の神として信仰された石清水八幡宮など、阿弥陀如来を本地仏とする古社も登場します。一遍聖絵には「仏道を修行する人は、神の威光を仰ぎ奉るべきではないか」(巻第6第2段)とあり、その言葉通り多様な社寺を訪れました。
本特集では、当館所蔵の国宝「一遍聖絵」巻第7と江戸時代に狩野派の絵師によって写された模本を手がかりに、一遍が訪れた聖地やその背景にある信仰に関連する絵画、彫刻、考古遺物を紹介します。一遍とともに諸国の社寺を巡るような気持ちでご覧いただけますと幸いです。
※ 本特集と同時期に、時宗総本山遊行寺(清浄光寺、神奈川県藤沢市)所蔵の国宝「一遍聖絵」全12巻が公開されます。ぜひ、あわせてお訪ねください。