本館 特別1室
2015年9月1日(火) ~ 2015年10月12日(月・祝)
奈良県奈良市に鎮座する春日大社は、創建以来多くの人びとの信仰を集めてきました。この春日大社に祀(まつ)られる神々の利益(りやく)と霊験(れいげん)を描くのが春日権現験記絵(三の丸尚蔵館所蔵)です。全20巻から成るこの絵巻は、鎌倉時代の後期、高階隆兼(たかしなのたかかね)という宮廷絵所(きゅうていえどころ)の絵師が描いたもので、多くの絵巻作品の中でも最高峰のひとつに数えられています。
江戸時代後期には、紀州(和歌山)藩第10代藩主徳川治宝(とくがわはるとみ、1771~1852)の命によってこの春日権現験記絵の模本が制作されました。浮田一蕙(うきたいっけい、1795~1859)、冷泉為恭(れいぜいためちか、1823~64)、岩瀬広隆(いわせひろたか、1808~77)といった名だたる復古やまと絵師たちによって写された模本には、彼らの画技がいかんなく発揮されています。
この特集は、春日権現験記絵模本の魅力とともに、春日信仰の諸相を様々な角度からご紹介する試みの第2回目で、今回は「神々の姿」をテーマとしました。本来、神の姿は眼に見えないものですが、この絵巻の中では束帯(そくたい)の男性、貴女、童子、仏など、様々な姿で描かれています。美しい画面とともに、変幻自在な神々の姿にご注目ください。