本館 特別2室
2014年7月23日(水) ~ 2014年8月31日(日)
奈良県奈良市に鎮座する春日大社は、創建以来多くの人びとの信仰を集めてきました。この春日大社に祀られる神々の利益と霊験を描くのが春日権現験記絵(三の丸尚蔵館所蔵)です。全20巻から成るこの絵巻は、鎌倉時代の後期、高階隆兼(たかしなのたかかね)という宮廷絵所(きゅうていえどころ)の絵師が描いたもので、多くの絵巻作品の中でも最高峰の一つに数えられています。
江戸時代後期には、紀州(和歌山)藩第10代藩主徳川治宝(とくがわはるとみ、1771~1852)の命によってこの春日権現験記絵の模本が制作されました。浮田一蕙(うきたいっけい、1795~1859)、冷泉為恭(れいぜいためちか、1823~64)、岩瀬広隆(いわせひろたか、1808~77)といった名だたる復古やまと絵師たちによって写された模本には、彼らの画技がいかんなく発揮されています。
この特集は、春日権現験記絵模本の魅力とともに、春日信仰の諸相を様々な角度からご紹介する試みの第1回目で、今回は「美しき春日野の風景」をテーマとしました。春日信仰においては、神々がまします春日野の景観そのものも信仰の対象とされ、多くの絵画作品に描かれてきました。今も清澄で美しい自然にあふれる聖地・春日野の景観を、春日権現験記絵模本や春日宮曼荼羅(かすがみやまんだら)、春日鹿曼荼羅(かすがしかまんだら)などからご紹介します。