本館 特別2室
2011年9月6日(火) ~ 2011年10月16日(日)
古来、仏教経典を書写することは大きな功徳があると考えられてきました。日本でも飛鳥時代に仏教が伝来して以降、時代や社会的な地位を問わず多くの人々によって経典の書写が行われました。奈良時代には国家鎮護のため、政府機関として写経所が設置され、書写の専門家である写経生を動員した大規模な写経事業が行われました。聖武天皇の手跡と伝えられるようになった雄渾な「賢愚経」(大聖武)や、光明皇后の発願になる「五月一日経」をはじめとして、この時代の経典は現在に至るまで多く残されています。平安時代になると、王朝貴族や地方豪族の発願による写経が行われるようになり、特に貴族の美意識を反映した華麗な装飾経が制作されました。「久能寺経」「竹生島経」「中尊寺経」などはその代表例です。
今回、当館所蔵の古写経を網羅した『東京国立博物館図版目録 古写経篇』が刊行されたことを機会に、奈良時代から鎌倉時代にかけての古写経の優品を集め、その美しさと書写にかけた人々の信仰をうかがいます。