本館 特別2室
2011年7月20日(水) ~ 2011年8月28日(日)
昔から妖怪にたいして日本人は高い関心を持っています。妖怪やお化けは日本美術や歴史資料にもたびたび登場します。8世紀初期に書かれた「古事記」に、すでに、八つの頭と尾を持つ大蛇「ヤマタノオロチ」についての記録があります。室町時代の絵巻には、身の回りの日常品ですら妖怪化し、ぎょろりとした目玉と小さな手足で、夜な夜な京の街を徘徊する様子が描かれています。そして江戸時代、妖怪絵師鳥山石燕によって妖怪のイメージは確定されました。
しかし、いまだかつて妖怪の存在が実証されたことはありません。 一体妖怪とは何者なのでしょうか。妖怪については、古くから研究がなされてきました。民俗学の祖、柳田國男は妖怪を神が落ちぶれた姿だと定義しました。民俗学者小松和彦氏は、妖怪を人間が創りだしたものとして、「この世」と「あの世」の境界もしくは既知と未知の境界に住まう、はみだした存在だとしています。 科学が発達した現代でもなお妖怪が私たちの心をとらえて離さないのは何故でしょうか。それは常識では割り切れない不思議なことや予想もつかないちょっと怖いことが大好きだからです。そして不思議でちょっと怖いものに魅了された私たちは、心の片隅でいつも妖怪に会ってみたいと願っているのです。