国宝 賢愚経(大聖武)(部分) 伝聖武天皇筆 奈良時代・8世紀
本館 2室
2018年1月30日(火) ~ 2018年3月11日(日)
賢者(けんじゃ)と愚者(ぐしゃ)に関する臂喩的な説話69篇を収めた経典『賢愚経(けんぐきょう)』を写した写経です。『賢愚経』は正しくは『賢愚因縁経(けんぐいんねんきょう)』と呼ばれます。聖武天皇の筆と伝えられ、書の名品を集めて一冊に仕立てた古筆手鑑(こひつてかがみ)の冒頭を飾る名筆として諸家に分蔵されています。料紙は(りょうし)釈迦の骨粉を混ぜた荼毘紙(だびし)と伝えられますが、実際には紙を漉く際に樹皮を漉き込んだ料紙に胡粉(ごふん)を引き、薄墨の界(かい、罫線)を引いたものです。通常の写経が1行17文字で書写されるのとは異なり、「大字法華経」(だいじほけきょう)(竜光院(りゅうこういん)蔵)などと同じく、大ぶりな字形で、1行12~14字に書写されています。揺るぎない点画(てんかく)、端正な気魄に満ちた量感溢れる筆致で、その書風は中国・北魏(ほくぎ)時代太和22年(498)の「始平公造像記(しへいこうぞうぞうき)」などに酷似し、舶載の写経、あるいは帰化人による書写という説もあります。
『賢愚経』は、漢訳の13巻本が一般に流布していますが、この「大聖武」の冒頭「波斯匿王女金剛品(はしのくおうじょこんごうほん)第八」 は13巻本では巻第2の巻頭に該当しますが、品の名称を含んだ第1紙目が6行しかなく、別に編成された17巻本を用いて書写されたものと考えられます。
また、前田育徳会(まえだいくとくかい)本の第3巻に、東大寺戒壇院に伝来したという跋文(ばつぶん)が記されており、断簡の名称「大和切(やまとぎれ)」はこの伝来の地にちなんだもので、また「大聖武」の名は伝称筆者・聖武天皇にちなむものです。
指定 | 名称 | 員数 | 作者・出土・伝来 | 時代・年代世紀 | 所蔵者・寄贈者・列品番号 | 備考 | |
おすすめ | 国宝 | 賢愚経(大聖武) | 1巻 | 伝聖武天皇筆 | 奈良時代・8世紀 | B-2402 |