国宝 充内供奉治部省牒(円珍関係文書の内)(部分) 平安時代・嘉祥3年(850)
本館 2室
2017年6月6日(火) ~ 2017年7月2日(日)
円珍(えんちん、814~891)が内供奉持念禅師(ないぐほうじねんぜんし)に任命されたことを示す治部省の辞令書です。通常、このような辞令書は作成されませんでしたが、円珍は、唐へ渡る際の身分証とする目的で、右大臣藤原良房(ふじわらのよしふさ)に発行を頼みました。唐で見せるために、署名をした官人の名も、「江大舫」などと中国風の三字名になっています。
円珍は、弘法大師・空海(くうかい)の血筋にあたり、15歳のときに比叡山に登って延暦寺座主義真(えんりゃくじざすぎしん)に師事し、僧となりました。仁寿3年(853)に唐に渡り、5年間各地で修業し、天安2年(858)に日本に戻ります。以後、比叡山山王院に住し、さまざまな人々に法を授け、貞観10年(868)に延暦寺座主に就任しました。園城寺(おんじょうじ)の再興にも寄与したため、円珍に関わるたくさんの文書が園城寺に伝来しており、本作もそのひとつです。
本作は、能書(のうしょ、書の巧みな人)が揮毫(きごう)したもので、附属する円珍自筆の添記には、唐の高官がこの書を賛美して写したと記されています。中国風のするどさの感じる楷書と時折柔らかい行書があり、肉厚な墨付の文字と渇筆(かすれた文字)のバランスが、見ごたえのある書となっています。
指定 | 名称 | 員数 | 作者・出土・伝来 | 時代・年代世紀 | 所蔵者・寄贈者・列品番号 | 備考 | |
おすすめ | 国宝 | 充内供奉治部省牒(円珍関係文書の内) | 1巻 | 平安時代・嘉祥3年(850) | B-2405-2 |