国宝 十六羅漢像(第二尊者)(部分) 平安時代・11世紀
本館 2室
2016年9月21日(水) ~ 2016年10月16日(日)
羅漢とは「修行を完成し、供養に値する者」を意味するサンスクリット語の「アルハット」を漢字音で表わした「阿羅漢」の省略形です。十六羅漢は釈迦の入滅後、長寿を保ち、法の護持と人々の救済を釈迦から託された16人の羅漢のことです。
唐代に玄奘 (げんじょう、602~664)が漢訳した『大阿羅漢難提蜜多羅所説法住記(だいあらかんなんだいみったらしょせつほうじゅうき)』(『法住記』)に16人の住所や名前が説かれますが、姿形や場面設定に関する記述は無いため、様々な図様が作られ、多くは羅漢の超人性を強調するような図様に描かれます。
一方、現存最古の作例で、もとは滋賀・聖衆来迎寺(しょうじゅらいごうじ)に伝来した本図は、古様で穏やかな図様を汲んでいます。例えば洞窟内で台座の上に坐し僧形の者たちに囲まれた第二尊者の姿は中国・敦煌石窟(とんこうせっくつ)等の仏龕(ふつがん)の仏像構成を彷彿とさせます。このように大陸に淵源があることを感じさせる要素を随所に見ることができます。
また、絹の裏から顔料を塗り、絹目を通して穏やかな色を見せる裏彩色(うらざいしき)の技法や、白みの強い柔らかく明るい色を用いて細かに描き込む画面作りは、彩色による美しさに重点をおいた11世紀の仏画の特徴をよく表しています。また画面向かって右上の色紙形(しきしがた)と呼ばれる区画には、白色の地に蝶・鳥・草花の地文様を描き、平等院鳳凰堂の壁扉画(へきひが)の色紙形に近い書風で『法住記』にある羅漢の住所と名前が書かれています。
大陸の香りを残しつつ、11世紀の平安貴族の美意識が凝縮された十六羅漢像をご堪能ください。
指定 | 名称 | 員数 | 作者・出土・伝来 | 時代・年代世紀 | 所蔵者・寄贈者・列品番号 | 備考 | |
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