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左上の大きな白い満月が,おぼろげにあたりの闇をも引き込んで,夕顔棚の風景と柔らかい白黒の対比を醸し出すのが,いかにも清新な趣である。月,夕顔,男,女,子供,竹棒,屋根,壁と,どれも異なる筆使いながら,一つに溶けあうように優しいのは,あくまで夕闇を意識した淡墨を基調としているからだろう。詩情豊かなこの画の主題は,木下長嘯子の和歌らしい。「夕顔のさける軒端の下涼み男はててれ(襦袢)女はふたの物(腰巻)」